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最終話(2):「終わりの見えない宇宙」
夜明け前、主人公は屋上に立っていた。
夜空はまだ暗く、東の地平からかすかな光がにじんでいる。
ノートに描き続けてきた円、楕円、放物線。
重力の井戸、光の落下、歪んだ宇宙――
そのどれもが一つの答えに向かっていた。
「すべては落ち続けている。」
だが、その先に“終わり”はあるのだろうか。
円は閉じた軌道を描き、楕円もまた中心に触れることなく回り続ける。
まるで宇宙は、どこにも到達せずに漂い続ける巨大な運動のようだ。
ふと、胸の奥でつぶやきがもれた。
「これは本当に楕円なのだろうか。
あるいは、楕円でさえない、終わりの見えない軌道なのかもしれない……。」
言葉は空へ消えた
主人公は深呼吸をし、目を閉じた。
答えは出ない。
けれど、答えのないまま歩み続けること。
それこそが「落下する時間」を生きるということなのかもしれなかった。
まぶたを開くと、朝の光が街を包み込んでいた。
その光もまた、はるかな宇宙を歪みながら落ち続け、ここに届いたものだった。
――終わりの見えない軌道の中で物語は静かに閉じていった。