第5話:確信
放課後の帰り道、主人公はふと空を見上げた。
沈みゆく夕陽が、わずかに傾いた軌道を描きながら沈んでいくように見えた。
まるで太陽自身が、ゆっくりと落下しているかのように。
「落ちるとは、止まらないことなのかもしれない」
そんな言葉が口をついて出た。
そこで夜の屋上で、主人公は小さな懐中電灯を取り出した。
闇に向けて光を放つと、細い筋が空気を裂くように伸びていく。
まっすぐに進むはずのその光を、じっと見つめる。
「もし、これが落ちているとしたら?」
自分でも笑ってしまうような問いだった。
光は秒速三十万キロで、直線を走る。
そう教科書は教えてくれる。
けれど、星の光は重力に曲げられる。
遠い銀河を観測した科学者たちは、その証拠をすでに見つけている。
光でさえも、重力に囚われるのだ。
「落ちないものなんて、ないのかもしれない、なぜなら....」
主人公はノートを開き、こう書きつけた。
光が落ちる。
だから、時間も落ちる。
ぼくたちは「落下する時間」に棲んでいる。
夜空の星は、静かにまたたいていた。
その光がここに届くまでに、幾千億年もの落下を続けてきたのだと想像すると、
目の前の闇が、底の知れない深さを持つ井戸に見えてくる。
「もし宇宙全体が、ひとつの巨大な落下の最中だとしたら……」
言葉は空へ消えた。
※光が落ちるとの表現ですが時間が落ちているからこそ起きていることと解釈してもらってもいいです。