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「群次希依の実母は彼が13歳の頃、家族旅行先で崖から転落死しています。」
「事故として処理された後、群次希依は叔父にあたる群次照久夫妻の元で現在も暮らしているようです。」
写真に映る可愛らしい顔立ちの少年と目が合う。推定5歳ほどだろうか。その少年の生い立ちがびっしりと書かれたA4サイズの紙をめくる。2ページ目には先の少年が成長した姿とは思えない、見るものすべてを敵とするかのような目をした青年がこちらを睨む。栗毛色の柔らかそうな毛質とその目つきのミスマッチさに何処か懐かしさを感じる。
「しかし、群次希依は次男です。群次ウェルネスを継ぐのは長男の群次祥希なので希依は何も知らなさそうですが。それに彼はまだ16歳です。本件とは無関係では。」
「初瀬、別の事件を追ってたらなんだかまた別の事件が出てきた、なんてこと経験したことあるか?」
「まあ、滅多にはないですが。しかし大体は同時期に別部署が捜査していた事件と関連があった事例が多いかと。」
「だったらこの群次ウェルネスの贈収賄、お前にとって初めてになるかもな。」
「はあ。?」
群次希依、もうじき彼の刺すような視線がこちらに向けられそうだ。