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膝小僧擦りむいたけれど

作者: kami10enpitu

新年になって初めて京都に立ち寄った。ゆっくり観光するほどの余裕が無くても、少し時間があるとお参りしておきたいと思う小さなお寺があるのだ。

最近の旅行客はキャリーバッグの人が多いが古い人間なのか

私は海外旅行(ずっと昔にしか行ってないが)のような長期でないかぎりキャリーバッグが苦手だ。

人混みの中で邪魔にならないように上手く引き摺る自信がないし、階段やエスカレーターの利用の際も転んだりしないか心配になる。だから2,3泊の場合は大きめのショルダーバッグを利用している。今回もお土産のお菓子などで膨らんだショルダーバッグを肩にかけたいかにも昭和な風体で、参拝を終えて京都駅に向かう市バスを一人待っていた。

予想通り乗客で一杯のバスが来た。たしか後ろから乗るんだよねと、後方乗降口に向かうとドアは開かず、前のドアが開いた。バスの乗り降りは地域によって、はたまたバス会社によって違うからややこしい。距離にかかわらず料金一律の場合は前から乗ってICカードなどで支払い、後ろ(真ん中?)から降りる場合が多く、乗車距離によって運賃が変わる場合は後ろの乗車口から乗る際にどこから乗ったかがわかるように一度ICカードをタッチしたり、あるいは番号が書かれたチケットを取ったりして前からの降車時に清算する場合が多いように思う。でも京都の市バスは市内一律230円のところで利用の際、後ろから乗って前から降りる際に料金を支払う・・・はず。少なくともいつも利用する路線はそうだった。話が長くなってしまったけれど、私は慌てて開いた前方のドアに向かった。慌てたのは些細なことに狼狽える性格のせいもあるけれど、乗客で一杯だから乗りますという意志を見せないと通過されるのではないかと焦ってしまったのだ。すると運転手さんが無言で「後ろから」と指し示すように大きく腕を振った。やっぱり後ろからだと急いで後方に向かおうとした瞬間、まるで運転手さんのカメハメ波を受けたかのように派手に転んだのだ。一瞬何が起こったのかわからなかったが、どうやら方向を変えようとした足が歩道の縁石に当たって態勢を崩し、運の悪いことに傾いて行く方に掛けていた大きなショルダーバッグの重みにひっぱられ為すすべもなく転んでしまったのだ。それでも何とか必死で起き上がり満員のバスに乗り込んだ。無様な様子を多くの乗客に見られただろう恥ずかしさと、どう打ったのかもわからないが体のところどころに感じる痛みに汗だくになりながらも、こんな時は何事もなかったふりをするのが一番と冷静を装った。怪我の程度が気になって仕方がなかったが身動きできない状態で、手に持ち替えたショルダーバッグとともに、荒い運転のバスの揺れに耐えるしかなかった。とりあえずついた方の掌の擦り傷の程度が軽い事を確認し少しほっとしたけれど、明らかに右膝に強打した感触があった。ズボンの膝の部分が破れているのではないかという心配があり、一刻も早く状態を確認したいという思いでひたすら早く駅に着くことを願った。京都駅に着き近くのベンチで確かめると幸いに膝は破れていなかった。あんなにダメージを受けた感じだったのに、膝が破れて下手すれば血のついた哀れな格好で新幹線に乗ることにならず良かったとほっとした。違和感を抱えたまま家に帰り着きすぐに確認すると、やっぱり下に履いていたヒートテックの膝は見事に破れ、そこからひどく擦りむいた膝小僧が見えていた。情けないな~と思いながらも、ふと膝小僧を擦りむくなんていつ以来だろう、小学生みたいだと可笑しかった。

参拝の後たまたま立ち寄ったお店の方が、今回初めて利用した路線の方が駅に向かうには便利だと教えて下さったのだ。その‘おもてなし’に満ちたお店の方の気持ちよい対応や、丁寧で明解な説明通りにバス停を見つけることができたことにさすが京都と、転ぶまで感じていたのにこんな事になるなんて。

インバウンド過多で大きな荷物をもった観光客にうんざりしているのか「後ろからですよ」とも言わず、まるで追い払うかのような仕草を見せた運転士さんにちょっとカチンときていたけれど、お気に入りの塔頭寺院は外せないし、見たい、食べたい、買いたいものが一杯で時間があれば立ち寄らずにはいられない。

だから運転手さん、一つだけ強がりを言えるならもう京都になんて行かないなんて言わないよ絶対。


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