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紅葉の村  作者: GANON
2/7

2

「すみませ~ん」


 妹が家の中に向かって声を掛けている。


「は~い、今行きま~す」


 少し高い男性の声が返ってくる。

 おそらく作業か何かで手が離せないのだろう。

 玄関からぐるりと見まわすと、右手には厨房だろうか、いい匂いがしてくる。

 目の前はカウンター、その奥に何人かが座れる和室の席がある。

 左手側には上に上がる階段があるようだ。


「いやー忙しくて、すいません。今日から泊まる方だよね?」

「はい。竜前亮二りゅうさき りょうじ、それと妹の竜前瑠璃りゅうさき るりです」

「ほいほい、・・・・・・じゃあ今日から3泊、3食付きですね」


 ひょろっとした受付のおじさんはカウンターに置いてあったパソコンで、俺たちの情報を確認している。

 ずいぶんと年季の入ったデスクトップのパソコンだ。


「では、上の部屋を使ってください。他の設備はトイレは1階、部屋には露天風呂があります」

「ご飯はどうすればいいですか?」

「このカウンター後ろにある和室か、お部屋で食べてもらうことになります。もう少ししたらご用意いたします」


 まだ11時過ぎだったので、とりあえず荷物を上階の俺たちの部屋へ運ぶ。


「荷物持ちましょうか?」

「いや、軽いんで自分たちで持ってきます」


 おじさんの助けを断り、部屋のドアを開けてもらい、入口で靴を脱ぎ、部屋にバッグを置く。

 部屋の間取りは、テーブルに座椅子が2つ。

 押し入れと冷蔵庫と金庫にテレビ、それにエアコンだ。入口近くの扉はトイレだろう。

 そこまでは普通の安宿っぽい一室。

 しかし、一番奥のドアからは外の露店風呂につながっている。

 

「・・・・・・おい」

「何? 兄ちゃん?」

「これ、中からも外の露天風呂丸見えじゃん」

「あ、ほんとだ」


 外からも丸見えな気がするが、山奥だし見る人もいないのだろう。

 これに関しては事前に調べなかったのが悪いな。

 別に見るのも、見られるのも恥ずかしくない仲だから気にしないが、体裁は大事だ。


「すいません、どこかほかに風呂に入れる場所ないですか?」


 部屋の説明をしていたおじさんに割って聞く。

 交互に入って、出るまで片方は待ちでもいいのだが、一応聞いてみる。


「ああ、隣の部屋も使っていいですよ」

「いいんですか?」

「予約も入ってないし、どうせ誰も来ないから使っていいですよ」


 めちゃくちゃ親切だし融通利くな。

 もうレビュー☆5つけたい。


「これ、この部屋と隣の部屋の鍵ね」

「はい」

「冷蔵庫の飲み物は自由に飲んでもらって構わないから」


 おじさんは2つの赤と青のキーホルダー付きの鍵をテーブルに置いていく。


「ご飯は時間になったら呼びに来ます。一応、部屋にも持って来れるけど、どうします?」

「下のカウンターのところで大丈夫です」

「わかりました。では、時間を気にせず露天風呂にゆっくり浸かっていってください。よい休暇を」


 そう言っておじさんは戻っていった。


「隣の部屋も使えるらしいけど、どうする?」

「うーん、とりあえず荷物はまとめておこうよ」


 2人分の荷物をまとめて部屋の隅に。

 金庫に財布を入れておく。

 金庫のカギはリストバンド付きだ。


「あ、やっぱり電波来てないよ」


 妹がスマホを見ながら言う。

 俺もスマホを見て電波が圏外なことを確認する。


「本格的に文明から遮断されてるんな」

「まあ下にパソコンあったけどね。お客さんは風呂入ってゆっくりしていけってことじゃない?」

「そういうことだろうな」


 流石に最低限のインフラはある。

 俺たち客は、何もせず風呂に入って飯を食って寝る、そういう贅沢をしろってことだろう。

 コンコンコンと部屋が3回ノックされる。


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