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平井のエッセイ・雑学&考察系

こうしてキャラクターは産声を上げる~KAC2024を振り返りつつ~

作者: 平井敦史

 カクヨムさんで開催されていた「KAC2024 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~」に8作品を投稿しました。

 読者様の中にも、参加したよ、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。


 公式から出されるお題に合わせて、3,4日ほどの締切内に最低800字以上の作品を投稿しないといけないというハードスケジュール。丁度年度末でアホほど忙しい時期と重なったため、途中で挫折しそうにもなりましたが、どうにか全8作品、無事に投稿できました。

 作品は、全て小説家になろうにも転載済みです。


 本エッセイではKACに参加してみた雑感と、その中で誕生した「大西おおにし美由紀みゆき」というキャラクターについて、語ってみたいと思います。

 え、何でそれをカクヨムじゃなくてなろうに書くのかって? いや、ことエッセイに関しては、やっぱりこっちの方が投稿しやすい気がして……(笑)。



 さて、お題は全部で8回出されたわけですが、最初のお題は、「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」というもの。

 正直、これだけだと何でもあり過ぎてあんまり創作意欲が湧かず、参加するかどうかも迷うところだったのですが、同時に、特別審査員の方から「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」というふざけたお題も出題されまして(必ずしも両方の条件を満たさないといけないわけではありません)。


 まあ、出題者としては「書けるもんなら書いてみろ」くらいの気持ちだったのではないかと推測されますが(笑)、これで一丁書いてみるかという気になりまして。

 で、頼れる創作の味方Wikipedia先生に訊いてみました。そうしたら、「バッファロー」とは本来水牛(すいぎゅう)を指し、アメリカバイソンに対して用いるのは本来誤用であるという衝撃の事実を知ったわけですが。

 それはさておき、アメリカ先住民(いわゆる「インディアン」)とバッファローを巡るアメリカ史の闇を知って、勢いに任せて書いてみたのが、『少年は全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを夢想する』。シリアスな歴史物です。

 ワシチユーマジでクソ。



 第二回のお題は、「住宅の内見ないけん」という、これまた頭をかかえたくなるようなものでした。

 が、あまりシリアスな作品を連投したくはないし、歴史物縛りも避けたかったので、思いっ切りはっちゃけた作風にしてみました。

 それが、『カモナマイダンジョン』。異世界のマンションならぬダンジョンを入居希望のモンスターが訪れ、案内係とあれこれ会話を交わすという内容です。

 葬送のフリーレンネタなど、パロディーてんこ盛りのおバカな作品となっております。

 最後はちょっと物悲しいエンディングですが。



 そして、第三回のお題は「箱」。

 箱と来れば、真っ先に思い浮かんだのは「パンドラの箱」と「玉手箱」でした。

 思案の末、「玉手箱」を採用。タイトルは『だから開けるなと言ったでしょう』。浦島うらしま太郎たろうのパロディーで、ジャンルは童話。……いや、あまり子供向けでもない気もするのですが、まあこまけえことは気にすんな(笑)。


 浦島太郎が地上に戻ってみたら経過していた歳月については、三百年とするバージョンがポピュラーなようですが、七百年とするバージョンもあるようでして。

 現代から七百年前というと、鎌倉時代末期~南北朝のあたり。自分が元いた時代の年号や為政者の名前など全く知らないであろう浦島太郎との会話で、いつの時代の人間かという情報を提示させるのにちょうど都合がいいやといいことで、七百年説で行ってみました。

 ここで登場するのが、浦島太郎の弟の浦島うらしま次郎じろう(笑)の末裔という設定の「浦島うらしま優子ゆうこ」と、彼女の友人の女性。

 この友人については、お馬鹿な優子とは対照的に、知識が豊富で頭が良い、要するに話を回してくれる便利キャラというだけで、この時点では名前など全く考えていなかったのですが……。

 ただ、「黒ビキニの眼鏡美人」という脳内ビジュアルがやたらと鮮烈でした(笑)。



 続いて第四回。お題は「ささくれ」。これもどないせーっちゅうねんという感じのお題ですが、何となく都市伝説的なものが思いつき、『指がささくれ立った女』という作品が出来上がりました。ホラーです。多分。


 これを最初書き上げた時には、前作と関連付けるつもりは全く無かったのですが……。

 前作で嫉妬ゆえに玉手箱を開けてしまい、浦島太郎と永遠に別れる羽目になってしまった優子を救済してやりたいという思いがあり、本作冒頭で主人公と会話を交わすお調子者で愛妻家の後輩の妻は実は優子です、ということになりました(笑)。


 そして、ついでに(本当についでに)、中盤で主人公に都市伝説を語る同僚の女性。

 最初主人公の耳に入れるのはお調子者キャラで、話半分に聞いていたところ、普段はそんな話をしなさそうな人物の口からも聞かされて、段々信憑性が増してくるという、オカルト物の王道パターン。

 単なる役割キャラにすぎなかったこの女性も、前作の眼鏡美人だということになりました。そしてここで「大西おおにしさん」という名前が付きます。下の名前は作中には登場しませんでしたが、一応「美雪みゆき」という設定でした。

 そして、仕事が出来るクール系美人だけど酔っぱらうときわどいことも口にする、というキャラ付けがされます。


 あと、このあたりから、8回ともジャンルを変えてやろうか、という野心が湧いてきました。



 さらに第五回。お題は「はなさないで」。「話さないで」なのか「離さないで」なのか、はたまた「鼻差無いで」なのか(笑)。あえてひらがなにしてあるところがミソですが、ここは素直に「話さないで」と解することにしました。


「話さないで」と来れば、やはり連想するのは雪女伝説ですね。

虚構きょこう推理すいり』の雪女さんリスペクトな感じ……だったはずなのですが、出来上がってみたら大分印象が違うものになってしまったかもです。

 タイトルは『雪山ゆきやま奇譚きたん』。現実世界ファンタジー物です。


 主人公は前作の名無しさん再登場。「小泉こいずみ八雲やくも」ならぬ「小泉星雲」という名前が付きました。「せいうん」ではなく「としゆき」と読みます。

 そして、大西さんも再登場。小泉にほのかな好意を寄せているという設定が追加されます。

 だが負けヒロインだ(笑)。


 メインヒロインの「六花りっか」は、あまり前例の無いタイプの雪女キャラに仕上がったかと思います。作者的にも思い入れが強いキャラですので、未読の方は是非読んでやってください(切実)。



 続いて第六回。お題は「トリあえず」。カタカナで「トリ」となっているせいで、大喜利おおぎり大会の様相を呈していましたが、ここは素直に「取りあえず」と解し、真っ先に思い浮かんだのは、百人ひゃくにん一首いっしゅ菅家かんけ菅原すがわらの道真みちざね)の和歌、「このたびは ぬさもとりあへず 手向山たむけやま 紅葉もみじにしき かみのまにまに」でした。

 タイトルは『とりあえず手向山たむけやま』。ジャンルは純文学です。


 で、この歌を題材に二人のキャラがただ他愛ない会話を繰り広げるだけ、という本作の主人公に起用されたのは、高校時代の大西さん。ここで初めて、下の名前も明らかにされます。元々は「美雪みゆき」だったのですが、雪女とかぶるのを避けるため、「美由紀みゆき」に変更。同級生の優子相手に、放課後の雑談に花を咲かせます。


 まあ、本作は本当に他愛ないお話なのですが、大西美由紀というキャラクターの方向性は大体ここで決まりました。

 そして、お題はあと二つ。何が来るかわからないけれど、ジャンルを全て変えるという課題をクリアするために、あと使えそうな札は「恋愛」か「ミステリー」といったところ。「SF」はねぇ……。じっくり構想を練ってならともかく、即興で書ける気はしないので。



 そして第七回のお題は「色」。比較的扱いやすそうなお題です。そして、ここでミステリーの札を切っておこうということで、社会人になった大西さんが再び主人公に抜擢され、ちょっとした推理(?)を披露します。何だかどこぞの薬屋の娘さんみたいになってしまいましたが(笑)。

 ミステリー系を書くのは初めてでしたが、人死ひとじにが出ないミステリーとしてそれなりに上手くまとまったかな、と。ただ、ちょっとテーマとの絡みは弱かったかもしれません。


 あとついでながら、ここまではっきりと設定してはいなかった、浦島太郎と優子たちが逢った浜辺の場所について、大まかな設定が固まりました。

 美由紀たちが高校時代までを過ごしたのは香川県かがわけん西部。より正確に言うと、浦島伝説が残る三豊市みとよし荘内しょうない半島のあたり。

 高校卒業後は東京の大学に進学し、夏休みに帰省して海に行っていた時に浦島太郎と逢ったということになりました。

 ちなみに、優子の新たな恋人となりその後結婚する藤田ふじたが美由紀と同じ職場にいるのは、偶然ではなく、恋人の親友から福利厚生その他の面において良い会社だと聞いて、就職先を決めたからだったりします。



 さあ、いよいよラストのお題。何が来ても適当にこじつけて、『雪山奇譚』で負けヒロインとなった美由紀に新たな恋の予感、みたいな話にするつもりではいたのですが……。

 お題はまさかの「めがね」。もうこれ美由紀を主人公にするだけでクリアじゃん、公式()様ありがとうって感じです。


 とは言え、一応はめがね要素をもう一つくらい追加しようと思い、何かないかな~、眼鏡橋めがねばし、メガネザル、メガネグマ、メガネカイマン、メガネモチノウオ……って何だったっけか、ああ、ナポレオンフィッシュの和名だっけ、と連想が進み、じゃあ舞台は水族館にしよう、ということになりました。


 タイトルは『ナポレオンフィッシュと眼鏡の君』。ジャンルはもちろん現代恋愛。

 失恋旅行で京都を訪れた美由紀が、京都きょうと水族館すいぞくかんで年下の男性と出逢って、新たな恋の予感、的なお話を、男性側視点で描いています。

 何故京都水族館かって? そりゃあ、関西在住の作者が何度も行ったことがある好きな水族館だからですよ(笑)。



 といった次第で、平井のKAC振り返りでした。

 お題まかせの出たとこ勝負で短編を書き連ねているうちに、当初は全く意図していなかったキャラクターがどんどん育っていくという、中々楽しい経験をさせてもらいました。

 与えられたお題に挑戦、というのは勉強にもなりますし、機会があればまた挑んでみたいと思います^^ では~ノシ

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「KAC2024 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~」のお題に合わせて執筆した作品群はこちら。
 
第一弾『少年は全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを夢想する』お題は「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」+特別お題『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』。歴史物です。
第二弾『カモナマイダンジョン』お題は「住宅の内見」。異世界ファンタジーです。
第三弾『だから開けるなと言ったでしょう』お題は「箱」。童話です。多分。
第四弾『指がささくれ立った女』お題は「ささくれ」。ホラーです。多分。
第五弾『雪山奇譚』お題は「はなさないで」。現実世界ファンタジーです。
第六弾『とりあえず手向山』お題は「トリあえず」。純文学です。
第七弾『色は移ろう』お題は「色」。ミステリーです。多分。
第八弾『ナポレオンフィッシュと眼鏡の君』お題は「めがね」。現実世界恋愛物です。
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