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9. 襲撃

ルナレフと入れ替わり、険しい顔をしたペリンが着くと、すぐさま周りを確認する。

「これは厄介だな」

「そうだな…」

「俺たちが見回りした後に、ここで様子を見ていた者が居た様だな。状況として疑うなら、強盗か…?」

ペリンの言葉に、テレンスとシドも頷く。


「夜に襲って来なかったところを見ると…襲撃箇所は、この先の道だな。他の場所に痕跡はあったか?」

「ない。この辺りだけだ」

ペリンの問いにはテレンスが即答する。

ペリンが来るまでの間、シドとテレンスが周りを確認していたのだ。


「一度馬車へ戻って、皆に報告と相談だな」

ペリンの言に頷き、3人は馬車へ戻った。



馬車の近くには既に皆が集まっている。デュランも起きて身支度も終わっていた様だ。マッコリーの服を握り、怯えた表情をして立っていた。

どうやら先に初見の報告を済ませているらしく、マッコリーは厳しい顔をしている。


「焚火のところへ一度、集まってください」


ペリンの指示に従って、皆が集まり腰を下ろす。


「どうやら、朝方に川からこちら側を窺っている者が居たようです。人数は3人。既に気配は無いので今は大丈夫です」

そう言ってペリンは皆を見回す。


「状況からみると、強盗かもしれません。狙いは“荷”でしょう」


「夜中に襲ってこなかったな」

ルナレフが思案気に言った。

「ああ。偵察が先行して様子を確認して、報告しに戻ったんだろうな。襲いやすい奴らかどうか、とかな。向こうは恐らくある程度の人数は居るだろう…」


するとマッコリーも加わる。

「この場所は皆がよく野営で使う場所ですから、ある程度の荷物を持っていたり、金目の物がありそうな人々が来るのを確認して襲っているのでしょうか…」

「その可能性はありそうですね」


それから続けて地図を取り出し、道筋を確認しつつ話し合う。


「襲うとすればこの辺り…か」

ペリンが指摘し、皆が同意する。

「この辺を越えると道も広くなっていくし、街も近くなってくるからな」

テレンスが追って言うと、ミードからも声が上がる。

「そこまでの間でも襲う可能性が無い事もないので、気を緩める訳にはいかないでしょう。暫くは気を配りながらになりますね」


重くなる空気に、デュランが涙目になっていた。子供であろうと状況は全員と共有しているのだ。


「デュラン君、大丈夫だ。俺達が守るから心配ないぞ」

案じたペリンがそう告げる。

「そうだぞ、デュラン君。こう見えてお兄さん達は強いから、心配ないよ」

わざと明るくルナレフが言う。

それに続き冒険者達はみな、笑顔で頷いた。




それから手早く朝食を摂り、準備を整え出発した。

昨日の移動では、馬車と冒険者は距離を保ちながらも多少離れて行動していたが、今日は密集して移動する。

出発してから直ぐに、テレンスは先行して偵察に出た。何かあれば伝えてくれるだろう。皆がピリピリと緊張しつつも、予定通り道を進んでいった。


そして暫く経った頃、当たりをつけていた場所に近くなると、テレンスが戻ってきた。


「やはり居るな。人数は10人…といったところだ。脇の林に隠れている。近づいたら襲ってくるぞ」

報告にペリンが頷き、馬車へ向き直る。


「このまま気付かぬ風を装って進みます。皆さんはお守りしますので、安心してください」

御者席ではロニが、窓からはマッコリーがペリンを見て頷く。

竜の翼とシドはいつでも武器を取れるよう、警戒態勢をとり進んでいった。



-----



― カキン!! ―

左の林から何かが飛んできた。

「きたぞ!」

そう言ったシドの足元には、切り捨てた矢が落ちていた。


すると林から一斉に8人ほどの男達が出てきた。


「ミードは皆さんを誘導して防御!」

「了解!」

「ルナレフ・テレンスは後衛! 俺とシドは前へ!」


ペリンの指示が飛び、ミードは3人を馬車から下ろし離れた場所まで誘導する。

障壁(シールド)!」

そして即座に4人を包み込む様にして、透明な障壁を展開した。



「うぉぉぉー!」

「死ねー!」

「おりゃー!」

賊が叫びながら一斉に向かってくる。



ルナレフは障壁の前方に構え、テレンスは馬車の屋根に登り林にいた弓使いを射る。

ルナレフからは火球が飛び、それを煽るように風が巻き起こり近づいてきた男を焼く。


それらを横目に、ペリンとシドは敵へ突っ込んで行く。

「シド!殺すなよ!」

「ああ!」


ペリンは槍を振り回し、相手の剣を往なしながら間合いを取りつつ傷を負わせて行く。

シドもペリンの反対側へ回り込み、舞う様に剣を振う。殺さぬ程度に刃を交えるのは中々面倒だ。

腕や足などを狙い、シドは剣に風を纏わせて高速で打ち込む。


「なんだこいつら!!」

「つえーぞ!!!」

堪らず賊が叫ぶ。


残り3人となった頃、林から馬に乗った奴が出てきた。

「てめーども何をやってやがる!さっさと片付けろ!」


そう叫んだ馬上の男は、剣を手に突っ込んできた。


「俺が出る」

シドは身体強化をかけ男へ向かって跳躍すると、自身に風魔法を当て追い風に高く跳ぶ。そのまま馬上に居た男に、上から切りかかった。


男はその一撃を受け止めたものの、バランスを崩し落馬する。そこへシドが追い打ちをかけ、剣を持つ腕を深く切りつけた。

「ギャーーーッ!!!」

男は腕を押さえて転げまわる。

「「 おかしらー!!! 」」

残りの賊達が叫び声を上げた。


あと2人になり、ペリンとシドで応戦する。


「シドは左だ!」

「応!」


シドは身体強化を掛けたまま剣を振った。

重たい一撃が相手を翻弄する。次の一撃で既に勝負はついていた。

相手が倒れシドが振り返ると、戦闘は既に終わっていた。



「終わったな」

ペリンがシドの方へ歩いてきた。

「ああ」

見回すと強盗達が地面に転がり、少し離れた馬車の傍にはマッコリー達とテレンス、ミードの姿があった。

そこから抜け出したルナレフが、シドたちへと近づいてくる。


「こいつら、どうする? 燃やす?」

物騒な事を言いながら、顔は笑みを湛えて嬉しそうだ。

「ルナレフ、冗談はやめておけ」

ペリンに言われるも「ははは~」と笑っている。

「取り敢えずは拘束するか」

ペリンの指示に、シドたちは強盗達を縄で縛っていった。


「全員、殺してはいません。多少出血はありますが止血もしたので、そのままでも支障はないでしょう。この男達はどうしますか?」

ペリンがマッコリーに指示を仰ぐ。


「そうですね……時間はかかりますがこの先の街まで連れて行って、騎士団に突き出しましょう」

「承知しました。ではこいつらは、縄で繋いで歩かせましょう。…馬はどうしますか?」


近くには、“おかしら”と呼ばれていた男が乗っていた馬が1頭、所在なさげに佇んでいた。


「…馬は連れて行くしかないでしょうね。放置する訳には行きませんし…ペリンさん達は乗れますか?」

その言葉に、冒険者達は顔を見合わせる。一瞬シドがピクリ揺れた。


「…シドは乗れるか?」

「動かす程度なら」

頷くペリン。

「ではシドに乗ってもらって連れて行きましょう。宜しいですか?マッコリーさん」

「はい。そうしましょう」

マッコリーも異存はないと頷いた。


強盗達を一人ずつを後ろ手に縛り、縦縄を主軸にして横2人ずつを並ばせて5人の列にする。全員で10人。

ブドウの房の様に、1本の縄に全員が繋がっている形となる。

もしも逃げようとすれば皆が一斉に同じ方向へ走らなくてはならず、その上、ルナレフが


「もし逃げようとしても皆が一塊だし、俺の“大炎爆撃(フレイムバースト)”で跡形もなく全員消すから、問題ないよー。というか、ここでやっちゃう?街へ連れて行く手間が省けるかなぁ~?」


などと聞こえる様に言ったので、強盗達は怯えて大人しくなってしまった。

「騎士団の方がまだましだ…」

と、賊が呟いていたのは聞こえなかった事にしておく。



程なくして、テレンス・ミードと馬車を先頭にして、後ろにペリン・ルナレフその後ろに強盗達を歩かせ、しんがりにシドが続く。


最後尾で馬に乗った男の手綱捌きは、“動かす程度”でなく安定した堂に入ったものだった。ペリンはそっと視線をはずし、再び出発する。


道中、時々ミードが馬車に向かって何かを話しているが、デュランを気遣っているのだろう。他のメンバーは話もせず、黙々と街道を進んでいくのだった。



2023.9.30-誤字の修正をしました。

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[良い点] 面白いです! [気になる点] 「殺すなよ」と言われていましたが、どうしてなのでしょう? 数的不利があるなかで殺さず確保するのは、殺して対処するよりかなり困難なはず。 殺さない方が実入りがい…
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