表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】シドはC級冒険者『ランクアップは遠慮する』~稀少なスキルを持つ男は、目立たず静かに暮らしたい~  作者: 盛嵜 柊 @ 書籍化進行中
【第五章-終章】シドという名の冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/108

88. 崩落

本日は2話を投稿予定です。

次話は、本日の20時過ぎの更新となります。

お付き合いの程よろしくお願いいたします。

シドとリュウは<フェイゲン>へ足を踏み入れる。


“コツンッ コツンッ”と靴音が響くが、それも直ぐに他の者の靴音に消されてゆく。人の気配が多いダンジョンの中は、戻って来る者達とも結構すれ違う。


その戻って来る者達は若い年代が多く、見た感じはD級E級のパーティ辺りであろうと、推測する。

彼らは魔石を取りに来ている様であるし、殆ど取れないとなれば早々に見切りをつけて、他の依頼を受ける事になるのだろう。


2人はそのまま、ダンジョンの中へ進んで行く。

この<フェイゲン>は10階層で浅い為、地図を持たずに入ってきていたシドとリュウであった。


「地図、貰ってくれば良かったかも」

「そうだな。浅いと思って油断していたな。思ったより階層毎が、広いのかも知れないな」

ここはまだ1階層であるが、道は一つではない為、少々ウロウロと歩き回っていた。

まだ入って1時間も経っていないが、魔物とは1回しか遭遇していない。


「魔物も余り出ないね」

「そうだな。やはり聞いた通りに少ない気がするな」


シドとリュウは、主に外での依頼を受けている冒険者の為、いつもどうなのかは分らないが、この調子が常であるならば、魔石を取って生活しようとしても、食べて行く事は出来ないと思われる程の遭遇率である。


そして先程出た魔物は、ドロップが無かった。いつも100%ではないだろうが、少々不安が募る。

洞内ではパラパラと冒険者達にも会うが、皆浮かない顔をして歩いている。


シドとリュウは下階へ続く道を見付けると、階層を下った。



シド達は今、5階層まで来た。

遭遇した魔物は、全部で11体。ダンジョンの半分を降りて11体では、シド達でさえ体感として、少なく感じる数であった。


シドとリュウは明かりの灯る道内で、顔を見合わせ肩を竦めた時、ダンジョンがグラリと揺れた。

2人は一気に緊張感を漲らせると、周辺の気配を探った。


だがそれ以上の揺れは感じず、再び慎重に歩き出せば、何処からか2人の耳に、微かに声が届いた。


「ぅぅ」


シドとリュウはその声を拾うと、その発生源を探して走る。

するとシド達がいた道の、少し先にある別の道に、土砂に埋もれた人が倒れていた。


「大丈夫か?」

2人は駆け寄ってその人物を見れば、頭から血を流し土や岩に体が埋もれ、意識もない様だ。


シドは身体強化を掛けると、リュウへ指示を出す。

「リュウ、少し下がっていてくれ。この人を出すから、後で回復(ヒール)を頼む」

「了解」


リュウは距離を取って離れると、シドは上に乗っている岩を退けて、その人を土砂から引っ張り出すと走査(スキャン)で視る。

そして特に大きな損傷がないと確認すると、リュウへ場所を交代し、続けてリュウがそこに来て回復(ヒール)を掛けた。


これで体は大丈夫だと思うが、まだ意識は戻らない様だ。

周辺を見ても他に人はいない様で、一人で潜りに来ていた者だろうと推測する。


そうしていると、シド達に声が掛けられた。

「おい!大丈夫か?」


それにシドとリュウが振り返れば、土に塗れた者達が3人立っている。

「俺達は大丈夫だが、この冒険者の意識がない様だ」

シドは慎重に、この状況を説明する。


「一緒のパーティではないのか?」

「ああ。通りかかったら、倒れていたのを見付けた」


シドと話している者達は、がっしりとした体格をした3人で、髪の色は土色になってしまっていてわからない程、汚れてしまっていた。


「そっちは大丈夫か?」

「ああ。俺達は9階層まで降りていたが、先程の揺れで壁の一部が崩落したんだ。何とか難は逃れたが、これから戻りながら、皆を外へ出させるつもりだ」


その言葉を聞いたシドは、頷いた。

「では、この人を連れて行ってくれないか?俺達はまだ、中に人がいるかも知れないから、それを確認して戻る」

「それは構わないが、2人で大丈夫か?」

「ああ。C級だから何とかなるだろう」


シドがそう伝えると、3人は納得した様で、頷くと倒れていた者を担いだ。

「では捜索は任せるが、無理はするなよ」

「ああ。当然だ」


その会話をして、3人の冒険者は外へ向かって歩いて行った。

それを見送ってから、シドとリュウは顔を見合わせた。


「他の階層を見て回るの?」

リュウはシドに首をかしげて見せる。

「いや、多分他の者達は、さっきの揺れで自ら外へ向かっただろう。俺達はこれから<フェイゲン>の所へ行く」


そうシドが言えば、リュウは心得た様に頷いてシドの隣に立つと、シドと手を繋いだ。


「<フェイゲン>、話がある」

シドがそう声を出せば、2人の姿は5階層から消えたのであった。




シドとリュウは、転移の浮遊感を抜けると、いつもの様な薄暗い空間に立っていた。

そこへ白いモヤが現れ、ゆらゆらと揺れている。


「来た様だ」

シドはリュウへそう声を掛けると、その白いモヤへ体を向けた。


「何かあったのか?」

そうシドから先に声を掛けた。


≪再生者…そのスキルを持つ者がこようとは≫

若干弱々しくも聴こえる声に、シドは戸惑いをみせる。


「どうしたんだ?」


≪うむ…近頃魔素(マナ)の供給に、不具合が出ておる。我は元々、大量に魔素(マナ)を取り込めんで、小振りである訳じゃが。それが更に弱くなっておる。大地の魔素(マナ)が、薄くなっておる様じゃ≫


それを聴いたシドは驚く。

取り込むことに不具合があれば、治す事も可能であるが、大地の魔素(マナ)自体が薄くなっているのでは、シドにはどうする事も出来ないのだ。


「それでダンジョンが脆くなっているのか…」

≪そうかも知れぬの。維持に足る魔素(マナ)が入って来なくなっておる故に…≫


シドは何とかならないかと、思案する。このままの状態であれば、近々迷宮(フェイゲン)は崩落する事になるだろう。そう考えていた時、先程の会話を思い出したシドは、<フェイゲン>に問う。


「<フェイゲン>は元々、大量に魔素(マナ)を取り込めなかったと言っていたか?」

≪是。我は生まれた時から、魔素(マナ)の入口が細い故、それを利用できるだけの大きさにしか、成長が出来んかったのじゃ≫


それを聴き、この迷宮の階層数を思い出す。

<フェイゲン>は小型の10階層で、それは、まだ生まれたばかりであった<ウラノス>と同じ深さだと。それを考えれば、魔素(マナ)の量が少ない<フェイゲン>は、大型迄成長する事なく、今までやってきたのだろう。であれば…。


「<フェイゲン>、魔素(マナ)の供給口を整えよう。もう少し広げて取り込めば、大地の魔素(マナ)が少なくなっても、今まで位は取り込めるようになるかも知れない。だが、これはやってみないと判らない事なのだが…」


シドは確証を得ている訳では無い為、提案として聴いてみる。すると<フェイゲン>から、直ぐに返事が返ってくる。


≪それは良いかも知れん。妙案じゃ。再生が叶わずとも、それならば我は納得して、最期まで活きる事が出来る≫


シドはそれを聴き、深く頷いた。

そしてリュシアンを見て目配せをすると、リュシアンは笑って頷き返し、壁際まで後退する。


それを見届けたシドは<フェイゲン>に向き直ると、剣を外して片膝をつく。

そして剣を脇へ置くと掌を地に付け、そっと目を閉じた。


シドから魔力が立ち昇る。するとシドの中に<フェイゲン>の構造が浮かび上がった。


10階層の迷宮(ダンジョン)には、動く物は殆ど感じられず、人の気配はない様で安心する。

そして集中(フォーカス)を入れて視れば、迷宮(ダンジョン)自体が弱い印象を受け、魔素(マナ)の量も、思っていた以上に少なくなっている事を感じた。


シドは一つ息を吐くと、<フェイゲン>が魔素(マナ)を多く取り込める様、願いを込めて詠唱する。



聖魂快気(スピチュアルアライヴ)



シドの詠唱と共に、迷宮(ダンジョン)の下より深く掘り起こす様にして、内部をすくい上げ、攪拌させ、魔素(マナ)を少しでも多く取り込んでから、間口を広げて…戻す。


纏う魔力が消え、スキルを切ったシドは、そしてゆっくりと目を開けたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 崩落してる・しそうな場所歩くのに「C級だから」もなにもあったもんじゃねーと思う… [一言] 白モヤか。大地から吸えるマナが少ないと白いのか、人が来ないと白いのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ