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【書籍化決定】シドはC級冒険者『ランクアップは遠慮する』~稀少なスキルを持つ男は、目立たず静かに暮らしたい~  作者: 盛嵜 柊 @ 書籍化進行中
【第四章】この途の行方

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73. 目的地周辺 【地図】

本日は72話と併せ、2話を更新しております。

この頁からお入りになった方は、前頁からお読みくださると幸いです。

※下部に略地図を掲載しています。

シドとリュウがラウカンの街を出た後、冒険者ギルド内では、迷惑を被った“グリフォンの嘴”に対し、次に顔を出した時には、ギルドとして丁重に謝罪をする様にと通達が出た。


ただでさえ、彼らはこの街に属する冒険者ではない上、街に属する者が迷惑をかけたのだから、それは当然の話という事である。

だがその通達が出た後、彼らはギルドへ顔を出す事も無く、街で見かける事もなくなっていたのだった。


それらの事を騒ぎ立てるでもなく、静かに姿を消していたという事に、ギルドの女性職員達は、彼らを愛でる事も出来なくなり、二重に残念がっていたという話である。


そして一方、降格された2人のその後はと言うと、それからもしばらくはD級冒険者として、魔物討伐などの依頼を受けていた。


だが、今まで他のパーティを引き込んで、依頼を受けていたのに、他のパーティから同行を断られた事で、仕方なく2人で依頼を熟さなければならなくなる。


流石に今回の事が明るみになり、今まで泣き寝入りしていた者達は、自分達以外にも手柄や報酬を奪われていた者がいた事を知ると、誰もこのパーティには近付かなくなっていたのは、当然であった。


そうなると、彼らの依頼達成率も下がり、そのペナルティから手持ちの資金もなくなる事で、道端で喧嘩する2人を度々見掛ける様になった。

そしてその後パーティは解散し、彼らはこの街からひっそりと姿を消したという事である。


それを知った街の者達は、この街の膿を排除してくれた2人の冒険者に対し、感謝すらしていたという事であったが、それはシド達には全く関心のない話なのである。



-----



シドとリュウは無事に、ウィルコックの森の麓まで転移すると、そのまま街へと入った。

先日来たばかりである為、利用する物の位置は大体わかる。流石に宿は違う処を見付ける事にして、ウィルコックの街に1泊したのだった。


そのウィルコックから翌日出発したシドとリュウは、街の南門から続く街道へ出た。

この道は、真っすぐに南下をすれば“マグノール領”へと続いている。

だがシド達は途中から西に進路をとると、バーネット領の隣にある“サトリアーネ領”へと進んで行った。

サトリアーネはバーネットと同様、北は国境となっていて国の最北端だ。ただしバーネット領よりも山岳地帯が多く、領地の中央を分断する様に山々が連なっている為、領内の街は、それを避ける様な配置となっている。


そのサトリアーネ領を、2人は東から入って来ている。

「リュウはもう、疲れは取れたか?」

「うん。昨晩回復(ヒール)も掛けたし、今日からはいくらでも歩けるよ。それより兄さんは、しっかり眠れた?」

「ああ。ぐっすりだ」


昨日のウィルコックでは、入った宿が1人部屋の空きしかなかった為、久しぶりに1人ずつで部屋を取ったのだ。お陰でシドは言った通り、本当にぐっすりと眠る事が出来たのである。

かと言って毎回、兄弟がわざわざ別々に部屋を取る事も怪しまれる恐れがある為に、偶にしか出来ない事だなと、シドが思っている事は余談である。


「では今日は、久しぶりに野営にしよう。雪が降り始めれば、野営も難しくなるしな」

「そうだね、了解。そう言えばこのサトリアーネ領って、ダンジョンがあったよね?」


「ああ。俺もまだ行った事は無いが、あると聞いている。だから今日はそこに向かおうと思っての事でもある」

「そっか。挨拶に行くんだね?」

「挨拶をするかは分からないがな。まぁ様子見だな」


シドは、リュウに顔を向けると苦笑する。

ダンジョンの全部が全部、問題を抱えている訳でもないだろうし、機会があれば逢う事もあるだろう。<ボズ>にも言われた事であるが、シドの気の向くままに、ダンジョンには立ち寄ってみるつもりだ。


それからシドとリュウは、街道の分岐に差し掛かる。そこは南へ行く道と北へ行く道が繋がっていた。

しかしシド達はそこから道を外れ、真っすぐに西へと直進したのだった。


地図に寄れば、この先に小振りな湖があって、その先に<ストラマー>というダンジョンがある。

この<ストラマー>の規模は、<ハノイ>と同じ20階層だと聞いている。そして歴史は永く<ストラマー>が発見されたのは、約800年前という事らしい。それからはこの地の一部として、存在し続けているという事である。


シドとリュウは道なき道を進み、そのまま林の中へ進む。

今は未だ陽も高くこれから夕暮れになる時間なので、その林の中にある湖の湖畔を通って行く事にしたのだ。


「北部には湖が多いね」

「そうだな。冬は雪も降るし、それが解けた水が流れ込んで湖を作っているのだろうが、俺はその辺りの事は詳しくはない」

「そうかもよ?多分、山からの水がここまで来ているんだよ」



そして2人は、湖の畔に出た。

この湖は近くに山々も望め、静かな山の麓という雰囲気である。


シドは今までの経験上、念の為に集中(フォーカス)を入れる。だが運よく今回は何も引っかかる事は無かったので、こっそりホッとしたシドであった。


隣を見ればリュウは湖面…では無く、シドを見上げて期待した目を向けていた。

これは多分、魔物の心配ではなく、あっちの事だろうと苦笑する。


「わかっている。今出すから、休憩する場所を探そう」

「うん」


リュウの返事を聞く限り、やはり景色を見ながら食べる物の事を考えていた様である。リュウはいつでもブレないのであった。


風も冷たくなってきている時期の為、今回の旅は既に外套を羽織り防寒対策をしている。2人は見晴らしの良い休憩場所を見付けると、シドは温かい飲み物と共に甘味を出した。


今日の飲み物は、真っ黒い見た目をしていて、香ばしい香りがする“カフェス”という飲み物だ。

これは暖かい国で採れる豆を材料にした物で、この国では輸入する事でしか手に入らない、少しお高い飲み物である。


このカフェスは、先日ウィルコックへ寄った際に見掛け、シドが気に入った飲み物であるが、リュウはこれにミルクや砂糖を大量に入れた物の方が口に合ったらしい。そしてその甘い香りを“好きだ”と気に入った様である。

その香りを楽しみながら、2人は静かな湖畔で休憩を取る。


「そこの西側の山の麓に、ダンジョンがあるらしい。夕方以降であれば、潜っている者はいないだろうから、その間に少し、ダンジョンを覗いてみようと思う」

シドが左側の山を指さし、リュウへ話す。


「そうだね。中で人と会わない方が良いもんね。消える処を見られたら大変」

そう言ってリュウは笑う。


「ああ。一応精神感応(コネクト)で受け答えは出来るが、他の奴らの前で消える事になれば、騒ぎにはなりそうだな」


こうして2人はまだ見ぬダンジョンの話をした後、再び出発したのだった。



地図上での<ストラマー>の位置は、湖から然程遠くはなさそうだ。そして1時間も歩けば、それらしき山の麓が近付いて来た。


「止まってくれ」

シドは立ち止まると、リュウへ声を掛けた。

シドはダンジョンに近付くにつれ、何か違和感を覚えた為に、集中(フォーカス)を使っていたのである。


「どうかした?まだダンジョンに、人の気配でもするの?」

リュウはキョトンとシドを見上げた。だが見上げたシドの顔には、それとは違う警戒の表情があった。


「いや、これは人ではないな。だが動く物がある。ダンジョン付近に、人ほどの大きさの物が、複数だ」

「え?魔物?ダンジョンから溢れてきてるって事?」

「判らない…行ってみないと、何とも言えないな」


シドは眉間に皺をよせ、そう答えた。


「行ってみるんでしょ?」

「…ああ。リュウはそれで良いか?」

「うん。ついて行くよ」

「では警戒をしておいてくれ。頼む」

「了解」


2人は気配を消しながら、ゆっくりとダンジョンの方角へ進む。

そしてリュウも感知できる位まで来た時、木々の間から見えてきたダンジョンの入口に、それらの姿を確認したのだった。




◇◇◇◇◇


▼シド達の現在地は、地図北部“サトリアーネ領”の東「アンガス」南のダンジョン付近です▼

挿絵(By みてみん)

例の2人に、長々とお付合い下さりありがとうございました。

ご不快になられた方々には、この場を借りてお詫びいたします。

ひたすらに絡みついて来ていたので、実は筆者もホッとしております。笑

引き続きシドとリュウにお付合い下さいます様、宜しくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 言い方が悪かったらごめんなさい。おっさんたちの顛末に関しては、匿名掲示板かそのまとめサイトを見ているような気分でした。そういうところでは吐き出しっぱなしで結末もなくモヤッとするものですが、本…
[一言] いや、嫌な奴が登場したから気分が悪かったんじゃないんだ。 嫌なやつに対しての主人公たちの対応が、先輩後輩の権威的な関係をごり押しされてそれに屈した上に、特に悪くもないのに街を出ていく決断をし…
[一言] 中途半端に絡んだだけの、ちょっと弱い奴らだったなって印象。 不快さもそこまでではないから、降格→解散コンボ食らっていてもそんなにスカッとしない。 おそらく、商人のほうでもう少し話が広がるのだ…
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