4話 ランク
「Aより……上?」
「あ、これこんなところで言っちゃ駄目なんだった。攻略班の人たちの気が削がれるから……だっけ?」
「だから、あんまりそういうことも言わないでくれないかな。花咲さん」
「その話も報告に向かいながらしましょうか。えーっと……」
「荷軽井一重です。一応Cランクで――」
「Cでそれってどういうことなの!? ってこれも後で聞きましょうか。今はこの嫌な空気の場所を出ましょう」
そうして俺は探索者たちの冷たい視線を浴びながら5階層を、そしてダンジョンを出た。
◇
「――あーお腹空いた。報告より先にご飯でもどうかしら?」
「俺はご飯より、まだ身体が痛くてですね。それに落ち着いてみたら頭の中でいっぱいいっぱいで……」
「まぁそうなるわよね。ランクCの探索者が急に、究極回避だっけ?そんなチートみたいなスキルを手に入れてしまったら。でもこれからは天国よ。さっきみたいな魔力結晶なんてざらだから。それに……できるだけ自分のしたいこと考えておくといいわ。きっとモチベーションも変わってくると思うから」
「?それってどういう……」
「あ、そっちじゃない。こっちよこっち!」
探索者はそのランクによって探索者協会が占有する施設を利用できたりできなかったりする。
ランクは魔力結晶の売却額以外に給料が貰えるシステムで高ランク、さらにその中でもトップの探索者は月収100万近く、なんて噂も聞くけれどそれ以上に探索者がランクに固執する理由がこの施設の利用。
俺のランクであるCランクだと無料で映画を見たり格安のスーパーが利用できる程度だけど、Aランクともなると超高層マンションに無料で住めるようになったり、無料の食事処、有名ブランドと共同経営している無料の衣服店等々、そして何よりも鍛冶場で専用の職人を選らぶことができるらしい。
俺たちの給料は武器の整備でかなりお札が飛んでいく。
それが無料。しかも、武器や武具を作ってくれる人までもつくなんて夢のまた夢。
大都会東京で突如現れた巨大な塔。その中にあるのがダンジョン。
天まで昇るその塔の先は途中で途絶えているが断面から中を見ることは不可。
魔法の影響なのだろうか、未だにそれがどれだけの階層まで存在しているのか、その観測も不可。
そしてそのダンジョンの向かいに存在するのが探索者協会を内包する大型居住区、探索者町。
俺はスーパーを利用する以外あまりここに訪れることはないけど、人によってはこことダンジョンを行き来するだけで人生が終わるらしい。
それだけここ探索者町は豊かに繁栄していて、ここに住まうことを1つのステータスにしている人もいるのだとか。
俺はダンジョン初潜入の時に1つ無条件で取得できるスキルで【回避力向上】という攻撃に欠けた……所謂ハズレスキルを引き当てたせいで、1日で狩れるモンスターに限りがあって、貧乏生活をする羽目になったからそれとは無縁だったけど。
そんな俺だけど流石に探索者町の地理くらいは頭に入れていた、入れていたはずなんだけど……。
「そっちなんもなくないですか?」
花咲さんが向かった先は人通りがない以外なんの変哲も見られない自販機。いや、ちょっとでかいか。
まさかご飯って、これじゃないよな?
意外に倹約家なのかな?
「うふふ、これを見るのも初めてよね」
「いや、自販機くらいランクCの俺でも――」
――ガシャン、ガシャガシャガシャ。
「え?」
「うふふ、面白いでしょこの発想。これ会長の提案らしいわよ」
花崎さんがボタンを何ヵ所か押すと、自販機は機械のいかつい音を鳴らしながら2つに割れアーチを作った。
そしてそのアーチの下にあったのは真っ白な階段。
「Sランク以上だけが利用できる裏探索者町。普段中々とりあえない協会のトップ集団もここでなら優先して会ってくれるし、気楽に声も掛けれる。AランクとSランク、どっちがどれくらい頼りにされているかこれでわかった?私たちちょおっと格が違うの」
「で、でもこれ、俺に見せても良かったんですかね? 推薦してもらえるみたいですけど、俺まだランクCなんですけど」
「……。……。……。だ、大丈夫よ! それだけ強いんだから問題ナッシングよ」
……。
ポンコツお姉さん。
問題ナッシングとか久々聞いたぞ。
お読みいただきありがとうございます。
モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。