ある日の出来事
前半部分の家事の場面は、実際に遭遇した出来事です。あの日の出来事は今も鮮明に覚えています。その後はフィクションです。
眠りに付いていたある日、犬の鳴き声で目が覚めた。かなり吠えている。
(クソっうるさいなー、目が覚めてしまった一体どこの犬だ!)
パチパチと音がする。
カーテンを開けると目の前が真っ赤である。
「なんだ……なっ」
道を挟んだ向かいの家が燃えていたのだ。
遮光カーテンと寝ぼけていた為、一瞬理解出来なかった。
この辺りは少し高級な屋敷が多く、敷地が広い。
こちも平屋階建の一軒家だが、前に駐車場があるため延焼は無いとは思うが屋根よりはるか上まで炎が上がっていた。
念の為2階に寝ている子供達を起こし、119番通報をした。
俺たち家族4人は呆然である。
「手の施しようもない」
俺は呟いてやいた。
やがてサイレンと共に消防車が何台もやって来て消化活動が始まった。
もう寝ているどころでは無い。
近所の人々も知らぬ間に集まって、状況を見守っていた。
火は2時間程で鎮火したが、全焼してしまったようである。
気づけばその家の住人らしき女性が涙を流し、消防士や救急隊に抱えられているのが見えた。
まさか、目の前で火災が起こり生々しく恐ろしい光景を目撃するとは思わなかった。
奥さんと子供達も言葉は無く震えている。俺の手のひらも汗でびっしょりになっていた。
数日後、仕事から戻ると奥さんがある事を言いだした。
「前の家の山田さんだけど、旅行に皆んな出掛けてて助かったらしいの」
「そうか不幸中の幸いやったな」
俺はオヤっと思った。
「だったらあの日は誰も居なかったて事だよな」
奥さんは不思議そうに俺の方を向いた。
「えっ、どういう事?」
「あの火事の時に住人らし女性が、涙を流して消防士や救急隊に抱えられていたのを見たけどな〜?」
「見間違えでしょう、隣りの方かも知れないわよ」
「なるほど……そうかもな!」
まあ、俺の勘違いか!
後日、新聞には死傷者は居なかったと報じられていた。
そして1ヶ月も経つと火事の事も記憶から薄れていった。目の前の火事現場もスッカリ更地となった事も記憶から遠のいた要因かも知れない。
ある休日の朝、奥さんが……
「山田さんのあの土地、売れたみたい」
「へぇーそうなんだ、売ってしまったのか」
「まあ、大変だったから心機一転したかったのかも」まあ、本当のところは分からない。
しばらくすると、工事が始まるようだ。新築の立て看板が立てられていた。
だが、数日後……
仕事から帰ると家の前、そう元山田さんの家に赤色灯を光らせたパトカーや警察車両が多数止まっていた。何があったのか!
家の玄関には奥さんが立っていた。すかさず声を掛ると……
「何?」
「工事現場から白骨体が発見されたらしいの」
「えっ!どういう事?」
さあーと言葉では無く、両手を広げ(分から無いという)ポーズをしていた。
事の顛末はこうである。
白骨体は男性で死後10年は経っていた。殺人事件であった。犯人は山田さんが住む前の住人の奥さんで、行方不明届も出されていたという。
遺産を手に入れる為に殺害し、床下に埋め家を売却したらしい。
山田さんは知らずに中古物件を購入し、10数年住んでいた事となる。とんだ災難である。
あの火事が無ければ発覚しなかった。
俺が目撃した住民らしき女性は、発覚を恐れ取り乱していた犯人の姿だった。
ふっと奥さんの顔を覗き見た。
奥さんの口元がいつもより上がっているように見えたのは気のせいだろうか!
なぜか身体がブルッと震えた。
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