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マイ・ホーム

藤川一家はある家を借りる事となった。

やがて奇妙な出来事がおこる……


あまり怖くないソフトホラーです。


マイ・ホーム


 あなたは持ち家派、賃貸派?

 もし、あなたが豪邸を貸しますと言われたらどうしますか?



 俺は藤川、うちの家族は家を探している。

 だけど現実はかなり厳しい――

「3LDK……3,500万円から……」

 ため息が出る。

 ところが、変な話が舞い込んできた。


 ある日、コーヒー専門店で住宅情報サイトを見てため息を付いていた時、彼はやってきた。

「よっ、藤川ちゃんまた住宅サイト見てため息か!」

 彼は旧友の大野、話があるらしく呼び出されたのだ。

「遅いだろ!」「スマンスマン――」 まあ、いつもの事である、彼はかなりの資産家のお坊ちゃん育ち、まあ遅刻は当たり前の人物である。

「今日は何なん?」

「へーっ、案外安いんだ!」 俺のスマホの住宅情報を見ての感想である、だが庶民には嫌味にしか聞こえない、ってのは彼には伝わらない――

「藤川ちゃんの家って2DKの社宅住まいやろ!」

 ほっといてくれ、しゃあないやろ、と心が叫んだ!

「家賃が格安の物件あるんだけど、藤川ちゃんどう!」

「えっ、どういうこと?」

 俺はお人好しかも知れないが、このご時世空き家も多いとよく聞く、旧友の勧めでもあり話に乗ってしまったのである。

 家賃が3万円で、今より広いという美味しい?話である。



 大野から疑いもなく家を借りてしまった。


 嫁さんは「大野さん……でしょう!」と少し疑っていたが家賃が3万円で契約書も作成するって聞いて、納得をした。

 少し片づけの業者が入るのでぎりぎりまで待って欲しいとあり、社宅の退去と重ったため物件を見ることなく引っ越しとなった。


 不安はかなりあった。


 高級住宅街の一角にその家はあった、家というよりまさかの……

 嫁さんと二人の子供たちはびっくりして空いた口が塞がらない。

「これ……なん?」

 俺もびっくりしてしまった!

 目の前にあるのは、まさかの大豪邸である。

 敷地は300坪以上あり建物も立派で、駐車場も車5台は置ける広さである。


 しかし、これが不思議な出来事の始まりであった。


 何事無く半年が過ぎた。 まあ、住み心地は悪くは無いが広すぎて掃除が大変だー。

 庭などは大野が手をまわし、定期的に業者を入れてくれているので助かってはいる。

 こんな立派な庭の手入れは無理である。

 ある日、俺が仕事から帰宅すると、嫁さんと二人の子供たちが駆け寄って来た。

「お帰り、ちょっといい」

 嫁さんと二人の子供は何やらソワソワしている。「あれ?」ってある部屋を指した。

  

「子供たちがお婆さんが座ってるっていうの」

「えっ、なにも見えないけど……」おれは恐る恐る声を掛けてみた。

「だれかいますか?だれか」


「………」


 沈黙が流れた。


 俺は子供たちの方を向いて「いつから?今も居るのか?」

「いるよ」お兄ちゃんが言うと「ずーっといてる」妹も指をさして叫ぶ。

「まさか……あれか……?」俺は両手を胸の辺りに手をやった。

「やめてよ!」嫁はもーって感じで手を横に何度もふった。


 どうしていいか、分からず困り果てていた。


 ふたりの子供たちが「さっきおばあさんとしゃべったよ……」 お兄ちゃんの方が言い出した。 妹も「ゆうてたゆうてた……」

 嫁さんが「いつ、しゃべってた?」「なんて?」子供たちに聞いた。

「ありがとう、ありがとっていってた」

 俺と嫁さんは意味が分からなかった。

 俺が目を離した瞬間、子供たちが叫んだ!


「おとおしゃん、おばあさんいなくなる、かえるって、きえる……ああーいなくなった!」

 言われて直ぐ、婆さんが立っていたところを見たが俺と嫁さんにはまったくわからなかった。


 消えてしまったらしい。


「ドロボウちゃうやろなー?」

「怖いこと言わんといて……!」嫁さんはブルブルと震えている。


 部屋の方々探したが、だれの姿も見当たらなかった。 

 後は鍵の掛かった部屋だけだが、大野からは荷物を置いているので使用しないでと言われていたし、鍵も掛かってて預かってもいない。

 ガタッ……その部屋から物音がした!

「ひえっ!」俺と嫁は飛び上がった。


「なんかいる!」

「大野さんに連絡してよ……怖いこわい……」

「そうやな……」嫁さんは怯え切っている。

 子供達は何も無かったように部屋を走り回って遊びだした。

 

 俺はすぐに大野に連絡し、お婆さんの話をした。

 

 大野は1時間ぐらいだろうかやってきた。


 大野は何かそわそわし、何時もと様子が違っていた。

「藤川ちゃんそのお婆さんて、どんな感じだった?」

「杖は付いていた?」

 大野はいつも陽気で、ある意味チャラい感じだが今日の大野は違っていた。

「つえついてたよ、おばあさんだったよ」子供たちはいっぱい大野に伝えようとしていた。


「まあー子供らの言ってる事だから」


 大野は少し考え話し始めた。

「実は、1時間前にうちのお婆さんが亡くなった」

 俺と嫁はビックリした。

「藤川が連絡してきた少し前に!」

 大野はしんみりと言った。


 お婆さんは最後まで1人でこの家に住んではいたが、半年前に具合が悪くなり病院に入院したという。

 空き家にすると物騒なので、俺たちに声を掛けたのだという。

 鍵のかかっている部屋には、お婆さんとお爺さんの物が残してあるそうだ。

 その部屋を開けて見たが誰もいない。

 お婆さんは良くなったら、この家に戻りたいと常々言っていたそうだが……

 


 その後、俺たちは別に嫌な感じもしなかったため、そのまま住まわして貰う事にした。

 ただ、あの日以来時々子供たちが、だれかと会話をしている。

「おとうしゃんおとうしゃん、おばあちゃんいるよ……あそんでくれるの!」 と、頻繁に――


  俺と嫁まったく見えないのだが、子供たちにははっきり見えているようなのだ。



 近頃では……子供達が「他にもいっぱいいるよ」と言いだしている、まさかとは思うが……

               

おしまい



いつもありがとうございます。

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