第14話 街を作る
『たった4人で街を作るのか?』
ヒギエラがそう言った直後、
(グゥ・・・)
ヒギエラのお腹から盛大な音が聞こえた。
『まずは腹を満たしてからということで・・・』
ボイはそういうと、街壁にそのまま調理器具を出し、料理を始めた。作り置きしていた野菜スープに、買い込んでおいたパン。そして、プロスチェで冒険者をしていた時に討伐した魔物のステーキである。ボイは調理魔法が使えるものの、料理をすることは全くできなかったため、今回は、全て調理魔法による作成である。
『意外に美味しい』
『十分美味しいです』
『調理する必要ないですね』
ボイの調理魔法による料理を3人は食べながら、勝手なことを言っている。ボイはそれに反論することも、同意することもなしに、ひたすら食べていた。
(調理魔法は一時的なもの・・・自分で料理できないと・・・)
早くも、将来を心配しているボイであった。
・・・
4人は街の中心に移動していた。
『では、今からここに城を作るので・・・』
そういったボイは、緑吸瘴石を地中に埋め込んだ。
『それはなに・・・』
ヒギエラが何か言い始めたその時、ものすごい轟音と共に4人の周囲を何かが覆い始めた。
(???)
数分後、4人はその現状に驚いていた。
『こんな仕組みだったとは・・・』
ボイも呆けている。“異世界の蔵書”には、
“作った街の真ん中に緑吸瘴石を埋め込む”
としか書いてなかったのである。そして、その通りに実行したボイだったのだが・・・。
4人のいた周囲に城が立ち、気が付かないうちにその城の中にいたからである。もっともと、城といっても普通にある王家の住む城というより、王家の住居+行政機能といった感じの施設が現れたのである。つまり、外と繋ぐ転移魔方陣(現時点では転移先がないため使えないが・・・)、上水道施設と下水道施設、役所のような機能があると思われる庁舎とその職員宿舎が王家の住居に併設されていた。
その有様に驚いていた4人は、建物の外に出た瞬間、変わり果てた景色に愕然とすることになる。
((なんじゃこりゃー))
『一瞬にして森が出来ている』
4人の声が揃った。
なんと、城+行政機能の外側は全て森になっていた。但し、ちゃんと街壁は存在している。いや、正確には、ちょっと違い、街の中に作られる予定の道路は全て舗装された状態で出来上がっていた。そして、城の隣には、何故か滑走路が出来ていたである。滑走路の周囲には柵がされており、外部からの侵入を防止するようになっていた。城・・・正確には行政機能の部分に駐機スペースがあり、この世界の飛行機が5機ほど駐機できるようになっていた。そして、その隣には、小型機の格納庫があり、乗ってきたBE36を収納できるようになっていたのである。
『でも、この飛行場どう使う?』
ヒギエラが呟いた。ここはビードロフ島の南にある魔物地帯である。飛行禁止区域になっているため飛んでくる飛行機はいない・・・。この場所を秘匿するにはこの飛行場は伝えない・・・。結局、BE36でモスドとの間を飛行することにしか使えなさそうである。
(せっかくあるから、そのままでいいか・・・)
ボイは深く考えるのを止めた。
・・・
4人は、城にある会議室のようなところに集まっていた。
『街中の道路が出来ているのに、何故か森になっていて、空港と行政施設だけが出来ている・・・』
城の最上階から周囲を見渡してきたヒギエラが状況を説明していた
『まあ、後は、入植者が来たところで森を住宅地なり、農地なりにしていけばいいはず・・・』
ボイは、何か遠慮がちに話し出した。
『殿下。何か隠しておられますね~♪』
リサが楽しそうにいった。ボイのことを幼少のときから見ていただけあって、隠し事をしているのがばれていたのであった。
『はあ・・・。リサには敵わないな。そう、森に見えるのは一時的なもの。入植者が来た時、魔法で元の姿に戻せるから・・・』
『ええええ~!!』
3人の声が揃った。
ボイは3人に追加の説明をしていた。それによると
・森は魔法により一瞬で消すことが出来る
・5年以内に3つの吸瘴石を集める必要がある
・入植者は5年後に勝手に集まる(予定)
・この街は“ノベーミスト”というらしい
というものであった。何れも“異世界の蔵書”の知識である。ちなみに、森が消せるのはボイが見落としていた事項で、慌てて調べなおした判明した内容である。
『とにかく、吸瘴石を集めることが必要なんだ』
ボイは3人に説明しながら、自分にも言い聞かせていたのだった。
(本当に大丈夫だろうか・・・)
実は、この街壁には魔物を寄せ付けない強力な結界と、外部からの認識阻害機能があり、ボイたちが乗ってきたBE36以外では、見つけることが出来ないという状態にあることを4人は理解していない(“異世界の蔵書”には書いてあるが、ボイが見落としている)。