第11話 黒い石
4人はBE36から降りて、黒い石の上に立っている。石の表面は鏡面仕上げといってもいいほどに仕上げられており、自然に出来たものとは到底思えなかった。機体に何故かあった工具(スパナに見えるが・・・)で叩いてみたが、傷すらつかない。工具のほうが凹んでしまった。
『恐ろしく頑丈な石みたいだ』
『これからどうしますか~?』
リサの緊張感のない言葉が聞こえてきた。
『ちょうどいいので、高さ的にも地表に降りれそうにないし、草原に何がいるかもわからない。外壁を作ってしまおうと思う』
黒い石は、高さ5mはありそうで、ここから降りるのは無理そうだった。
『はっ?』
ヒギエラとエウフロンネの声がそろった。リサは何故かドヤ顔である。
『まあ、ちょっと見ていて』
“異世界の蔵書”に在った知識を使い、鍛えた魔力を使ってボイは自分を中心に街壁を作ろうとしていた。
(多分いける・・・)
リサ、ヒギエラ、エウフロンネの3名が見守る中、ボイの体から大量のエネルギーが放出された。
『あれ?』
ボイの妙な言葉の直後、リサ、ヒギエラ、エウフロンネの3名の視界には、はるか遠くに何かが出来上がっている姿が追加されていた。慌てて周囲を見渡す3人・・・。
『よくわからないですが、はるか遠くに壁のようなものができたみたいです~♪』
リサが謎テンションで叫んだ。
『うん。壁の作成はうまくいったよ。ただし・・・魔力の消費が少なすぎるんだ』
ボイの言葉に驚いてボイを凝視する3人。
『半径13㎞、高さ5mの壁を360度作成出来たのだけど、今の私が持っていた魔力をほぼ全て使うはずだったんだ・・・がどういうわけか、ほとんど体にある魔力が減った気しないんだよ』
『半径13㎞!』
リサ、ヒギエラ、エウフロンネの声が揃った。
『ビートシティが全部収まる大きさではないかあ~♪』
『(トーロウ国の)セントラルシティより大きいです』
『スケールが大きすぎです』
3人はそれぞれ、勝手に呟いている。
まだ作れそうなので、黒い石の北側に黒い石を平行に舗装した平面を作った。
そして、その周辺を高さ2mの壁で取り囲む。
結果、幅1㎞、長さ3㎞の舗装したうえで周囲を囲んだ空間ができた。
『あそこを仮の拠点にしよう』
ボイは舗装した平面を指さした。
・・・
再び、4人はBE36に乗り、黒い石から離陸した。そして、先ほど作った舗装された平面に機体を着陸させたのである。
『最初に作った壁は広すぎて、中にモンスターがいる可能性がある。だから、今日は、内側に作った壁の中でキャンプをすることにしようと思う』
『賛成~♪』
『了解だ』
『問題ないと思います』
一応、内壁の中にモンスターがいないことを確認したのち、BE36をアイテムボックスに収納する。常識ではあり得ないはずだが、どういうわけか、ボイのアイテムボックスは、サイズに関係なく収納できるらしい
『どこかに限界はあると思うのだけれど・・・とりあえずBE36は入るらしいよ』
ボイも自分のアイテムボックスの仕様が理解出来ていないので、他の3名は、ボイの説明に頷くだけであった。
『舗装を解除するからね』
ボイはそういうと、先ほど作った舗装をすべて除去してしまった。一瞬、地面が消える感覚に襲われたが、舗装部が消失(数cm程度)だったこともあり、4人とも転ぶことなく、数㎝の落下をしたのみで済んだ。
『いや~貴重な体験でした♪』
リサは何故か楽しそうにしているが、
『地面がなくなる感覚は一瞬でも怖い(です)』
とヒギエラ、エウフロンネは叫んでいた。
(ちょっとまずかったかな)
ボイは地面の舗装をいきなり消したのを反省していた。
結局、内壁の中にテントをはり、アイテムボックスに入れておいた料理を食べて、その日は就寝することにした。念のためにテントに結界を張っていたのは、ボイだけの秘密である。
・・・
翌朝、リサの声で目が覚めた。
『石が無くなっています~♪』
ボイがテントから出て南側を見たとき、リサの言葉の意味を理解したボイであった。
昨日まで、その巨大な存在感を示していた黒い石が無くなっていたのである。
『本当だ!』
ボイの脇では、ヒギエラ、エウフロンネも同様に驚愕している。
『謎過ぎる』
『不思議なことが最近多すぎます』
ヒギエラ、エウフロンネがそれぞれ呟いていた。