転生王子は、すぐに死ぬ
「これより、王子の死刑を執り行う」
「えっ!?」
目が覚めると断頭台につながれていた。
こんなことを経験することは無いと思っていたが、どういうことだ。
どうしてこうなったんだ?
俺は前日何をしていた。それより相手は、俺の事を王子と言った。
王子?そういえば、イケメンになりたいとは言ったよ。
イケメンかどうかも確認できない。それに、なんでいきなり死刑なんだ?
このままだとまずい。
「待ってくれ。俺が何をしたって言うんだ」
「黙れクソ王子。婚約者を国外追放しておいて、
隣国に侵攻の理由を与えたことは万死に値する。
特に兵達がが死んだ作戦を考え実行したお前の罪は大きい」
「・・・なんだと」
「そうだ。良いことを教えてやろう。
あの観客のあのあたりに居る美人は
お前の元婚約者だ。その最後の姿をぜひ見てもらえ。」
いやいや。元婚約者って誰だよ。俺は男が指さす方角を見るとそこには、すごい美人が居た。
たしかに美しい人だ。なんで王子は婚約破棄したのだろうか。しかも悲しげに俺を見つめている。
目が合った。できればもっと早く出会いたかったな。
「縄を斬れ。王子には華々しく散っていただく」
「待ってくれ。もう少しだけ」
ざしゅん。
断頭台を知っているだろうか。頭を切り離すための処刑道具だ。
斬首を剣でするのは非効率だった、しかも処刑人の腕によってはなかなか亡くなることができない。それに比べ、ギロチンの方は一瞬で終わるから痛みを感じる間もなく死ねるから、ありがたいな。
マシな処刑法ではあるよな。
ごとん、ゴロゴロ。
そう思っていたら、俺の首が落ちた。
イケメンの王子に転生させてもらうだけだったのにな。
なんでこんなことになったのか。
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地獄 転生課
「はーい。次の方どうぞー」
「お願いします」
「あー。ダメ王子か。罪状もひどいですね。
王命に背いた婚約破棄、
婚約者を国外追放。
さらに敵軍を防ぐために騎士1000名を討ち死に
させる命令を下した。
これは、人間には転生できませんね」
「待て。待ってください。話だけでも聞いてください」
「ん?何かな?ダメ王子。ダメさ加減が突破しちゃったのかな?そもそもこーんなに罪がいっぱいあるんですよ。さっさとミドリムシに転生してくださーい」
「あの、前の担当者のピンク髪の受付さんを呼んで下さい」
「はぁ?何言ってるんですか?私があなたの担当ですよ。
前の担当者とか居ませんよ。なんですか?死にたてで狂っちゃったんですか?
ぷーくすくす」
「たしか、サツキンさんだ。前の担当者はサツキンさんだったはずだ」
「えっ?・・・なんでサツキンを知ってるんですか?」
今の担当者のマサミンは、俺が知るはずもない同僚の名前を出したことに驚いているようだった。いや、驚くとかどうでもいい。このままじゃ転生する前の王子の罪を被されてしまう。そんなのは嫌だ。なんで王子の尻拭いを死刑だけじゃなくて転生のペナルティーまで背負わねばならないんだ。
断固として抗議する。
マサミンさんは電話をかけ始めた。
ぷるるる
「サツキンさん今すぐ転生課窓口3番まで来てください。えっ。お菓子を食べるのが忙しいって?はよこいや」
がちゃん。
「おっと失礼。ところで、王子はどこでサツキンさんを
知ったんですか?」
「あー死刑になる直前に転生手続きしてくれたのがサツキンさんですよ」
「えーーーーーーーー。死刑直前の王子に転生?えっ。死にたかったんですか?なんなの?Mなんですか?」
「そんなわけあるかよ。俺はイケメン王子に転生したかっただけだよ。転生して10分で死刑とか聞いてないよ。そもそもなんでイケメンに転生してすぐ死亡とか詐欺かよ」
ガチャン。
扉が開くと、ピンク髪のほんわかした女性が現れた。そして馴れ馴れしそうに、マサミンに話しかけた。
「マサミンちゃん。呼んだー?あなたのために急いでやってきた。サツキンおねえさんだよー。あっ。ダメそうな王子も一緒なんだ。あれ?このダメな王子ってどこかで見たことが・・・」
「あぁ。お前に転生させる人リストで見たはずだよな。イケメン王子って条件だしたけど、俺は顔見る前に死んだからイケメンかすら分かんなかったよ」
「えっ。えっ?顔見ずに死んだって、記憶はいつ戻ったんですか?」
「死刑10分前だそうですよ。サツキン先輩」
「えっ。はっ?それって設定ミスじゃん」
「おまえーーーーーーー設定ミスってなんだよーーー。俺は普通の転生先で良いって言ったのに。あなたは善行値が高いからもっと良い転生ができますよ。イケメンとかどうですか?モテモテとか最高でしょ。ってセールストークしたじゃんかよ」
「分かりました。こちらのミスなんで、転生先をランクアップしますね。マサミン。この方の次の転生先は?」
「ミドリムシです」
「はぁーーーーーーーーーー。」
「えっ。ミドリムシをワンランク上げても大したものになれないんじゃ」
「だって、ダメ王子の罪がえげつないんですよ。たぶんあれですよ。あまりにダメで国に損害与えすぎた罪で、ミドリムシとして光合成して少しは罪を償えってことじゃ・・・」
「いやいや、この方、前世S級の善人だったから、普通の人じゃ善行値繰り越しが多すぎるようになるから、イケメン王子に無条件で転生させたんだよ。まあ私がちょっと二日酔いで手元狂って、記憶戻すタイミングをミスったからって、ミドリムシはまずいよね。私始末書じゃすまないよね」
「いやいやいや。正直サツキンさんの始末書とか関係ないよ。なんでダメ王子の罪が俺の罪になっちゃってるんだよ。俺そのころ記憶ないよ。それなら王子はミドリムシで、俺はイケメンに転生させてよ。俺イケメンに転生した実感すらなく死んだんだよ」
「「あーーーー」」
「どうしましょう。先輩」
「マサミンこういう時の対処法って」
「そうだ。似たような状況に記憶有で転生してを罪を起こさないか再チェックするのが無難では」
「そういえばそんな制度ありましたね」
「えっ。何勝手に決めてるの?もう王子とか王族とか貴族も嫌なんだけど。普通のイケメンでいいですよ」
「では王子。残念ながら王子にはイケメン王子に転生してもらいます。
そして卒業パーティの後を見事に生き残ってください」
「なんで?もう王族は嫌だから」
「そうしないと、王子の罪があなたの罪で確定しますよ」
「そんなーーーー」
「大丈夫です。あなたならきっと。よく似た悪役令嬢と王子の並行世界で善行を証明して、次の人生は楽しくなりますよ。それにタイミングが良いことに、転生の需要がいっぱいですから、並行世界いっぱいあるんですよ。これにより前項値の再検査が容易なんですから。100年待ちじゃなくて良かったですね」
「いや、サツキンさんの設定ミスのせいで100年待ちは意味が分からないから」
「では、王子。転生のお時間です。
男爵令嬢を助けるも良し。
婚約者を守るも良し。
破滅ルートを突き進むも良しです。
では王子。良い転生ライフを・・・」
「えっ。待って話が終ってない。って足元の床が無くなったーーーーーーーー」
「王子ーーーー。破棄宣言5分前ぐらいには記憶戻りますからねーーーーー」
断罪パーティ5分前とか、むりげーーーーだからーーーーー足元の穴に再び落ちて俺は転生した。
またも転生課のミスで、破棄宣言途中で記憶が戻ったり、言い間違いだと無理矢理開き直って、男爵令嬢を騎士に突き出すのは
別のお話。
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あとがきのコーナー
ご覧いただきありがとうございます。
京安藤しーぷです。
もし作品が面白いと思いましたら
★の評価の方をよろしくお願いいたします。
評価が増えると次回作の作成のモチベーションにつながります。
今回は、死刑物です。
あれ?転生してからの恋愛はどこにいったんだ。
敵国の王子に死刑させられる話だったはずなのに、どうして話が変わったんですかね?
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「お弁当に、おにぎりしか入っていないけど、幼馴染が卵焼きをくれたから、
午後の授業を頑張れる」
甘く、すこししょっぱい卵焼きから始まる恋
なんてものを書きたい。
書く時間が欲しい。
装甲もう少し、柔らかくしてほしい。
がんばろう。
ありがとうございました。