【いとおしさ】
ボクだけ、実家に帰る用が出来た。
本来なら、喜んで帰る。大好きな父と母、そして、兄妹達に会えるから。でも、今、ボクは結婚して、自分の家族を持った。大好きな彼女と一緒に居られるのが、ボクの幸せだ。そして、ボクの家族が新たに増えようとしている。だから、本当ならボクだけ実家に帰るのはイヤだ。大好きな彼女と彼女のお腹の中にいる子供を置いて、ボクだけ実家に帰るなんて。
「あなた、少しの間だから大丈夫よ」
彼女はそう言っているが、ボクがそう思えないだけ。だから、返答に困る。すると、彼女がボクにふんわりと抱き締めてくれた。
「大丈夫よ、私もこの子も。だって、貴方との子供がココに居るんだもの」
そう言って、彼女は自身のお腹を優しく撫でた。その手の上に重ねるようにして、彼女の手に触れると、彼女のお腹が動いた。
「あっ……、動いた」
「ほら、この子もそう言ってるわ。だから、大丈夫よ」
「わかった……、なるべく早く帰ってくるから」
「待ってるわ、……この子と一緒に」
お腹を見つめながら、優しく撫でるその様子が、とてもいとおしく感じるボクだった。
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