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第四話 パン

バターと小麦粉のいい匂いで目が覚めた。


目を開けると、そこは家の中だった。

今度は地面ではなく、ベットの上で寝ている。


少し硬めのベットに、柔らかい布団、なかなか快適な目覚めだ。


体を起こし、周りを見渡す。


壁は大きめのレンガで構成されているようだった。山から見ていた村のどこかだろうか。


窓の外にはいくつかの家と畑が見える。

ベット横の机と台があり、台には、自分の工具箱と帽子がのせてあった。


急に、自分が撃たれたことを思い出し、体を確認する。



どこも痛くはない。というか撃たれた痕跡が見当たらない。

服は先程着ていたものと違い、無地のパジャマのようなものを着ていた。


夢? 一体どこから?


混乱しながらも、拘束はされていないので動ける。


とりあえずベットからおきようとしたその瞬間、力が抜け、目の前が一気に暗くなった。


倒れながらも、なんとか床に手をつけたので、顔面から倒れはしなかいで済んだ。


少し体力を失いすぎたようだ。



ドタドタと音がし、誰かが部屋に入ってきた。


「目が覚めたんですね! 大丈夫ですか?!」


森であった女性のようだった。


すぐに近寄り、俺がベットに戻るのを手伝ってくれた。 優しみと暖かさを感じる。


彼女のブラウンで柔らかな髪からは、さっきまでのバターの香りが、より強くした。


いい匂いだ。

とにかくお腹が減って仕方がない。


お礼と、食糧を恵んでくれないかの話を切り出そうと思ったが、上手く声が出ない。


口を少し開けたまま、止まってしまった。


「お腹減ってるんですよね?! パン持ってきますね!」


こちらから言わずとも理解してくれた。


なんとかうなずくと、すごい勢いでドアを飛び出していってしまった。


1分もせずに、彼女はトレイいっぱいにパンを載せて戻ってきた。


後ろには山にいた炊飯器もついてきており、炊飯器の上にはスープと、飲み物がのっているようだった。


ここは2階のようだが、炊飯器は階段も登れるのか。


頭の部分の並行を保ち、器用にこぼさずに運んでくる。


足の長さは10センチから、30センチほどに伸び縮みするようで、関節が一つ確認出来た。


山で撃たれた時の銃口はついておらず、少し頭の形も違う気がした。


別の炊飯器個体なのかもしれない。



パンを持ってきてくれた彼女は、ベット横の机に料理をセットし、食べるように促した。


パンとスープのいい匂いが立ち込めている。


程よく焼かれ、少しバジルがのったバゲットを、コンソメ色のスープに浸して、口に運んだ。


美味い。体がとろけるようだった。


全身に力が戻る、胃に血があつまり、身体が料理に感謝してるのが伝わる。


お腹が減っていたからなのか、今までで一番美味しいご飯に感じた。


スープを飲みながらパンを食べ進める。

パンには、程よく噛みごたえがあり、バターの香りが心地よい。


彼女の香りはこのパンの香りと同じだった。


スープは、とろけた玉ねぎが入っており、スープもパンも、食べる手が止まらない。




これはスチームパンクじゃなくて、料理ジャンルの異世界転生だったのか。

なかなか悪くない世界なのでは。


あー、なるほど?

だから炊飯器ロボが初出なのか。


なんてバカなことを考える余裕も出てきた。


スープを二回おかわりし、大きなトレイの半分ほどのパンを食べ尽くしたあたりで、


水を飲み、やっと一息つけた。


「ご飯、ありがとう。美味しいです。」


思っていたことが、そのまま口をついた。


彼女はとても嬉しそうで、少し誇らしそうな笑顔になった。


「そうでしょ!? うちの1階で作ってるパンなのよ。 沢山食べて!」


それから、ハッと思い出したように、険しい顔になった。


何かを怒られるのだろうか。


ご飯とにこやかな表情ばかりに目を奪われていたが、改めて、目の前にある綺麗な顔を見つめ直すこととなった。


瞳が、綺麗なグレー色だった。

今日は夕方も更新があります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 炊飯器、ですか。 えぇ、個性としては素晴らしく、またスチームパンクと組み合わせるのもつかず離れずの関係でマッチしていることでしょう。 地の文が少ないためにネット小説初心者やあまり時間を掛け…
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