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第三十一話 生き残るために

「見せてやれ!フォーリー!」


少年がカブトムシごと手を高く掲げ、虫取り網を背で横に持ち、カッコイイポーズで叫んだ。


Tシャツ短パンの姿だが、その立ち姿はまるで三国志の豪傑だ。


俺は息を飲み、相手の出方を待つ。



「………………」



2人の間に沈黙が流れる。



何も起きていない、ようだが。



風が吹き抜ける。


木の葉の擦れ合う音。


助けてェー、離せェー、という声。




少年の手にはカブトムシ。


俺の手にはナマケモノ。


それぞれが、生き残るためにバタバタしていた。




「あの、一旦離してもらってもよろしいでしょうか?じゃないと先進められないんで。」


少年が、カブトムシを掲げるポーズのままこちらに話しかける。


少し大人びた話し方だ。



コイツら、敵でいいんだよな??


モヒカンリーゼントと比べて敵感がだいぶ弱い。


まぁ、森でスリをしてたのは本当だろうし、一応退治していいんだろう。



ナマケモノから手を離すかは迷ったが、今後のスリを防止するにも、種明しはしてもらった方が良いと判断して手を離してあげた。



「フフフ、見せてやれ!フォーリー!」


「ボクの本気を見せてやるゥー!」


少年が改めて決め台詞を叫ぶ。


俺の手から逃げ出した風船ナマケモノは、ストックでサクサクと移動をはじめた。


俺から少し離れたところで、1メートルくらいの円を描くように、くるくると周り始めた。


何を見せられているんだろう。


風船のついたナマケモノがぷかぷか浮きながらストックで歩き回っている。


それも深夜の森の中、ランプの灯り1つでこれである。


知らない村人が見たら、何かの儀式だと思われかねない。



「う、うわぁー!なんかの儀式だぁー!」


振り返ると、通りがかりの村人が腰を抜かして逃げていくのが見えた。


悪いことをしてしまった。



これは、いつまで見ていればいいのだろうか。


俺は道に座りながらナマケモノを見続けている。


この距離でもストックのサクサクという音は聞こえる。


「サクサクサクサクサ……」



急に音が止まった。


ナマケモノはまだ移動を続けている。


なんだこれは。ナマケモノの足音が聞こえなくなった。


聴覚への攻撃だろうか。


指輪からの感覚へのハッキング?


「どぉーうだ?! 何も聞こえなくなっただろう!フハハハハハハ!!」


少年がポーズを維持しながら高笑いしている。



「回り続けるナマケモノ!!

 高笑いする短パン小僧!!

 止まらない儀式!!


 いったいツクル達はどうなっちゃうの?!


 次回、ツクル 死す!!!!」


こんな、遊戯王風のナレーションが、思い浮かんだ。


このナレーションついつい最後に「死す」ってつけたくなるのは良くないよな。



少年の声も、森の音も聞こえる。


足音が聞こえない以外の変化はない。



俺は、回り続けるナマケモノを見ながら、相手の攻撃が来るのを、体育座りで待った。

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