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第二十九話 夜の森

「この森の中で最近、道を歩いてる人が盗難事件にあう被害が増えているわ。」


盗難。


山賊や強盗団ならわかるが、森の中で盗難とはどういうことだろうか。


「そして、その事件は夜の間だけ、発生するのよね。」


俺は窓の外を見る。


じいさんが帰り、日もだいぶ沈んできた。


まだ夕方と言っていい明るさだが、街灯もない森の中は、既に真っ暗な闇に見える。


リリーは説明を続ける。


「夜の森を歩いているとね、ランプに照らされた道の真ん中にね、おサイフが落ちていることがあるの。」


「誰かのおサイフかしら、落とした人が気付いて戻ってくるといいわね。」


「なんて、拾わないで通り過ぎると、またすぐ先に、似たおサイフがランプに照らされるの。」


「一体なんなのかしら?と思っておサイフを手に取ってよく見てみると、自分のおサイフとそっくりなのよね。」


「で、まさかと思ってバッグを探してみると、自分のおサイフはバッグからいつのまにか無くなっているの。」


「ツマリ、自分ノ財布ガ盗マレテ、自分ノ眼前ニ置カレテイル。」


ゴメスさんがトランプ(?)のエースらしき札をだしながら補足する。


「そうなの。何故わざわざおサイフを返すのか、誰がそんなことをしているのか、何もわかっていないわ。」


「でも、夜道で誰にも気づかれず、おサイフをすって、現金を抜いた後に持ち主に返す、こんなことをする人が、いるのかしら。」


「地縛霊の仕業だー!って隣のおじいちゃんは言ってたわね。」



暗い森の中で、襲われるわけでもなく、そっと盗んで、返すだけの行為。


山道の通行料を求める地縛霊。


そこで死んだ霊達が、地面から這い上いでて、サイフを抜き取る姿を思い浮かべてしまった。


生唾を飲む。背筋が寒くなるのを感じた。



「黒い影を見た!! なんて人もいたわ。」


リリーが怖い顔をした後に笑って見せた。


そこまで怖がってはいないようだ。




「夜道だし怖いのは怖いんだけど、現金以外の物が盗まれることはなくて、現金も少ししか盗まれないのよね。」


「どのくらい?」


「私は3€だったかしら。 子供のお小遣いくらいの額だから、家計簿と付き合わせないとちゃんとわからなかったわ。」


「私のおサイフにも、もっと入っていたんだけれど。」


「たくさん取られる人もいるらしいけど、その人が困らないくらいの額が盗まれるみたいね。」


「だから、『妖精の悪戯』なんて言う人もいるんだけど。」


「アレハ、間違イナク機体ニヨル攻撃ダッタ。」


「ゴメちゃんはこう言って聞かないの。」


「当時ノ私ノ感覚器官デハ捕捉出来ナイ速サダッタ。戦イハ推奨シナイ。」


「今なら捕捉出来るというのかしら?」


俺の炊飯器が、絵柄らしきトランプを出しながら質問をする。


こいつはいつの間にルールを覚えたんだ。


「今ハ近接感覚器官ヲアップデートシテイルカラナ。」


「デフォルトノオ前ヨリハ大分気付ケルサ。」


「あら、失礼なサイコロね。」


確かに、ゴメスさん、もとい白い炊飯器はサイコロに見えなくもない。


ゴメスさんは言葉には反応せず、カードを切る。


「これで勝負あったな」


「ちっ!もう1回!」


うちの炊飯器の負けのようだ。 もうルールを理解してる時点で十分すごいよお前は。


あと、たまにお嬢様言葉が乱れてるぞ。


「そういえば、サイフを取られたカバンは切られたりしていなかったのか?」


「いいえ、でも閉めていたはずのカバンが開いていたわね。」


なるほどな。


アップデートしてから戦うべきか、今のままトライしてみるか。


急ぎで退治する必要性も高くはなさそうだが、失敗しても小銭が取られるだけか。


リスクは低い。


今夜も今後も盗難は続くだろう、早く退治出来ることにこしたことはない。


どうしたものかな。


この村にあるものでなんとか出来ないものか。


・リリーの家(家具一式)

・少年の家(家具一式)

・農作業道具、農作物(クワ、ロープ、植物など)

・パン工房の道具(伸ばし棒、パン粉など)


リスクも少ないようだし、少しトライしてみたくなってきている。


俺はリリーに少し準備に協力してもらい、炊飯器と森に向かった。


リリーに借りたランプは、3メートル先までしか照らさず、5メートルも先は完全に闇であった。

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