第二十四話 いのち
「おい、大丈夫か?!」
少年に駆け寄る、と手に血がべったりとついた。
左肩に弾があたったらしい。出血が酷い、早く手当てしないと。
トラックには酒瓶と飲料水はあったはず、まずは消毒を……
俺の胸に、少年の拳が力なくあたる。
「オメェは、さっさと、覚悟決めろよ。」
少年は激痛のはずだが、口角を上げ、笑顔を無理矢理つくっている。
「さっさと、あいつらぁ、ハッ、追っ払ェよ!」
息も絶え絶えにそう言い残すと、痛みに耐えるように、目をキツく閉じた。
ガギン、と、鈍い金属音がする。
炊飯器が、俺と少年の盾になっていた。
今度は直撃してしまったらしい。
衝撃でこちらに吹っ飛ばないよう、タイヤの踏ん張りを効かせている。
あたった箇所からは、少し煙が出ているようだ。
故障したのかもしれない。
俺の覚悟がないせいで、みんな殺されてしまう。
「なぁ、そろそろ助けてくれないかな。 俺はあいつらを、本当に追っ払いたいんだ。」
炊飯器に心からお願いをする。
「…………」
炊飯器は答えない。
もうなんて言えばいいのかわからない。
とにかく、どうなってもいいから、あいつらを、やっつけたいのに。
カチン、安全装置が外れる音がした。
「やぁーっとアンタも覚悟がついたのね! ほんと遅いんだから!!」
炊飯器は待ってましたというように、勢いよく銃弾を発射させていく。
全て弾は狙い通りにとんだ、まさに機械のような精密さだ。
1台1台と、タイヤがパンクしたバイクが転んで、後ろに消えて行く。
映像がスローモーションのように感じられた。
ギィン、と嫌な金属音がして、4発目の銃弾が防がれたことがつきつけられる。
バイク達の前には、迷彩カラーのタワー型ロボが立ち塞がる。
タワーのボディは横に広がり、完全に道を塞いでいた。
このボディには、こちらの銃弾は無効なようだ。
これは攻略のしようがない。
だが、敵からも攻撃出来なくなったようだ。
一安心である。
「村つく前に決着つけるんじゃぁ! 村がバレたら襲われるぞぃ!」
トカゲじいさんが運転席から叫んでいる。
それは困った。
タワー型を攻略する火力はこちらにはない。
モヒカンも、「俺の記憶」によると、自分の安全第一なやつだ。
タワーが自身の守りから外れることもないだろう。
俺たちの戦力は、
・トカゲじいさん(運転中)
・少年(瀕死)
・俺
・もってきた工具箱(開かない)
・炊飯器
ハンドガン(残弾不明)
スタンガン(未使用だが、絶対射程が短い)
・小型トラック(移動手段なので壊したくない)
・トラックの荷台にある荷物(瓶入りの酒と水、雑誌、簡単な食糧、マッチ、タバコ、バールのようなもの、トラックの替えタイヤ)
こんなところか。
壁になっているロボを破壊する火力は、トラックを潰してワンチャンだろうか。
トラックで突っ込んでバールで戦う。
うーん。
失敗した時のリスクも、俺たちへのダメージも交通事故レベルになってしまう。
どうしたものかな。
やっぱこれしかないかな。
2分ほど考えた後に、俺はトカゲじいさんと炊飯器に作戦を伝えた。
少年の傷口を水と酒で消毒する。
一応服をちぎって止血もどきもしてみたが、血は止まらない。やり方があっているかもわからない。
額にはすごい量の汗をかいているが、体温は低い。
死ぬなよ。
もう時間もないし、やるしかないな。
多分、火力は出るはずだろう。
作り方もこれであってるはずだ。
俺は酒瓶に雑誌をちぎって詰め始めた。




