第二十二話 帰宅
「な、何よ。 メンテナンス自体は悪くないわね。またさせてあげてもかまわなくてよ。」
炊飯器が少しデレたようだ。
でもこれ、よく考えるとデレ先がじいさんトカゲで、俺にはデレてない気もするな。
まぁいい。
どちらにせよ機嫌がいいので、少しはコミュニケーションが取れそうだ。
じいさんトカゲがリリーの村に送り届けてくれるというので、お言葉に甘えることにした。
じいさんは小型トラックを運転し、俺と少年、それと炊飯器は荷台に乗った。
じいさんが荷台に50センチ幅の鉄板をたてかけると、炊飯器は綺麗に登ってみせた。
荷台はそこそこに揺れたが、俺は疲れていたのか会話もそこそこに、眠りに落ちてしまっていた。
「おい、起きろ。ヤベェことになった。」
少年におこされる。
小型トラックは林の中を走っている。
村の近くまで来ているようだ。
「さっきの男が、仲間連れて戻ってきてる。」
トラックの後ろ側を見ると、7台のバイクに世紀末ファッションの男達がのっている。
500メートルくらい後方だろうか。
まだ、バイク音がうるさくないくらいに離れてはいるが、相手からは確実に視認されている。
彼らは全員が、釘バットや銃で武装しているように見えた。
バイクの方が早いようで、徐々に距離をつめられている。
トカゲのじいさんもトラックをかなり飛ばしてくれてはいるが、限界がありそうだ。
世紀末バイク集団の中に、一人だけ、ハーレーに乗った、身体の大きいモヒカンがいる。
遠目に見ても、2メートルはありそうな巨体で、かなり太ってもいる。一人だけ規格外の大きさなことがわかる。
世が世なら、大型の相撲取りとして期待される体型だ。
多分、あいつがボスだな。
ボスの横には、縦に長い、茶色と緑の迷彩カラーリングのロボも確認できた。
また登録者か。
ベースは防御が強いタワー型かな。
無力化して追い返せれば良いが、完全に勝つにはロボの破壊か、指輪を重ねなければならない。
破壊は、今の火力じゃ厳しそうだ。
勝ったとしても、モヒカンデブの記憶を脳内に持たなきゃダメなのか。
自分の脳内に、二人分もヒャッハーな記憶を入れてしまって、俺は自我を保てるのだろうか。
徐々にモヒカンヘアーに憧れたりしたら最悪だな。
そんなことを考えていると、ズキンと脳が痛み、また「俺」の記憶が再生される。
「大丈夫か? そろそろ追いつかれるぜ。」
少年は警戒しながらも俺を心配する。
俺は、あのデブモヒカンを「知っている」。
敵との距離は、もう100メートルも離れていない。
敵の銃口が、こちらに向けられた。




