表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

林檎飴

作者: 紫尾

 林檎飴を食べたいと思った

 赤みを帯びたその頬に

 甘い朝露を滴らせた

 可憐な少女の頬の様な林檎飴


 出店の老婆が差し出した

 其の皺がれた手の中の赤

 揺籠の中のふっくらとした頬に

 その瞳から溢れ出した涙が滴った

 無垢な赤子の頬の様な林檎飴


 頬に噛り付いた

 甘美な赤が魅せた幻想に翻弄された

 ひんやりと冷たい陶器の固さ

 じっとりと舌に纏わりつく甘味

 

 赤が誘う幻想から醒めた

 太鼓、笛、鉄板の焼ける音

 跳ねた金魚が水面をかき乱す


 赤が魅せる夢幻から醒めた

 此の役に立たぬ赤い陶器を

 そっと内緒にゴミ箱に放りこんだ


 祭提灯の赤、金魚の鱗の赤、林檎飴の赤

 赤みの帯びた頬に赤い血の通った唇

 少女が林檎飴の頬に噛り付いた

 林檎飴の様な頬が緩む


 私の赤と少女の赤

 赤と赤の別世界

 少女の赤が恋しくなり

 私はしゅんと淋しくなった


 祭提灯の赤、金魚の鱗の赤、林檎飴の赤

 赤と赤の別世界

 少女の赤い世界を

 少年の日の私は知っていた



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ