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プロローグ

「わたしたちをおよめさんにして!」

せんしとぶどうかとまほうつかいとそうりょはゆうしゃにいいました。

こうしてゆうしゃはぼうけんしゃたちとけっこんし、いつまでもしあわせにくらしましたとさ。

めでたしめでたし


「これがあなたが行く世界の女の子たちが憧れる絵本です。」転生の女神はざっくりと説明した。

「端折りすぎだ!いっちゃんわからん!」俺は思わず九州の方言が出るほど、激しくツッコミを入れた。

「何がわからないんですか?『結婚が無理なら私を愛人にして!』って王女が勇者の靴にキスするシーンなんか、感動的だと思うんですけどね~」女神は「お前の感性がわからない」とでもいいたげだ。

「いや、その勇者ロクな死に方しねーだろ!クズすぎる!」俺が言うと、女神はキレながら叫んだ。

「私の悪口を言うのは良い、勇者様の悪口を言うのだけは許さない!」

「だから感情移入しすぎだろ!アンタ的に熱いシチュエーションかもしれないけど、アンタの性癖は聞いてないからね!?」俺のツッコミが追い付かない。

「とにかく冒険者にはなれません。女の子が冒険者にあこがれる世界です。冒険者になりたいなら先に切り落として下さい。」女神は無情にそう言った。

「冒険者になれないのか・・・少し無双にあこがれたんだけどな。」俺は無念をにじませながらつぶやいた。

「???別に無双するな、冒険するなって言ったワケじゃないですよ?『冒険者になれない』って言っただけですよ?」女神は首をかしげながら続けて言った。

「あなたは生まれ変わった時の職業を選べます。死刑執行人か墓守か勇者です。」女神は手を広げ「さあ、選びなさい」というジェスチャーだ。おかしい、女神は勇者を選ばせようとしている。

つーか、間違いなく悩むような選択肢は隠している。

「それしか選択肢がないなら『墓守』でお願いします」意地でも勇者なんて選ぶもんか!

「え、え、えー!?予想の斜め上の答えが返ってきましたよ!?あなた無双したいんじゃ、冒険したいんじゃないんですか!?勇者になるしかないじゃないですか!?あなたが悩むような選択肢はきちんと隠したはずなのに、別の選択肢を選ぶとは何事ですか!?たまげたなー!?」女神は大げさに驚いた。

「アンタうざい!うざいしアンタが管理してる世界に生まれ変わりたくない!アンタを神として崇めてる連中なんて、アンタほどじゃなくてもみんなうざいんだろ?」俺はウンザリと言った。

「何を言っているんですか!あの子達はみんな素直ですよー?私とは別人格です!だから勇者として心配せずに生まれ変わっちゃって下さい!」墓守を選んだ事も他の選択肢もみんななかった事になってやがる。どうあっても勇者に生まれ変わらせたいようだ。根負けした俺はついに「わかった。勇者に生まれ変わってもかまわない。」と言ってしまった。

「勇者様になってくださるんですか!?とりあえず私の顔を踏んでくださいますか!?」女神はついでにとんでもない要求をしてきた。

「アンタの性癖はともかく、勇者には勇者のスキルがあるだろ?それをもらおうか?何かスキルあるんだろ?」俺は手を出してスキルを要求した。女神は目をパチクリさせながら質問に質問で返してきた。

「何で勇者にスキルが必要なんですか?あなた勇者になるなら『勇者プレイ』をする訳ですよね?スキルなんて必要ないんじゃないですか?」

勇者プレイ?何を言っているんだろうか?

考え込んで黙っていたのが運のつきだった。

隙をついて女神は俺を転生させてしまったらしい。


物語は気付いた時に立っていた『デール』の街の入り口から始まる。


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