最後の砦
「魔法使うぞ!」
「わかったわ」と叫んで、凛子が後ろに飛ぶ。
「【核撃魔法 神怒】」
俺の杖から飛んだ黒い球は膨張しながら進み続け、射線上の魔物たちを屠っていった。もう一方手を凛子に向ける。
「【神聖魔法 神癒】」
蒼の光が凛子を打ち抜くと凛子の全身の傷が癒え、乱れていた呼吸も落ち着いていく。
「ありがとう!たすかったわ」
「いや、全然。それよか、また来たぞ!」
ドドドドドドドと音を立てて、魔物たちが走ってくる。
「弱い魔物ばかりよこして・・・これなら吸血鬼とか、ドラゴンとか相手にする方が楽だわ」
「そうだな。もう一週間もゆっくり寝てないし。まぁ、こんな大変な時期だし、がんばらなきゃな」
「もー。お人よし。あんな誘拐犯たちを」
「そんなことを言ってもしょうがないだろ。今救える命が目の前にあるんだから」
「はぁ。めんどくさいわ。家で寝たい」
「俺も凛子と寝たい」
「な!」
凛子の顔がにやける。
やっぱり凛子はかわいい。世界で一番かわいい。
「さぁ、もう少しがんばったら任務終了だ。交代の誰かが来るはずだからな」
「そうね。じゃあ、まぁ、行ってくるわ」
「おう。後ろは任せとけ」
凛子が腰の刀を抜き、目にも止まらぬ速さで走っていく。
「【神聖魔法 神速】」
凛子の動きが一段と早くなる。これで少しは楽になったかな。
「さて・・・と。もう少し遠い魔物に攻撃して、数を減らさなきゃな」
銃を構える。
「【思考加速】【並列思考】」
情報処理が大量に熟せる様になり、魔法を二つ同時に放てるようになった。
大量の魔法を展開し続けるときはこれが絶対必要になる。
「【光魔法 多重光線】【風魔法+火魔法 豪炎竜巻】」
俺たちはこの後も魔物たちを延々と屠り続けた。
一週間たった。有象無象の魔物たちが俺と凛子の攻撃により死んでいく。しかし、大量に魔物は押し寄せ続けている。これも一週間も続いているのだから、もうどうにかなりそうだ。そろそろ休暇がほしい。ってか、10年ぐらい寝てたい。もう疲れたし、凛子と二人でゆっくりしたい。くそったれ。早く伝令きやがれ!いくらスキルがあるからって、限界がある。交代を伝える伝令が来ない。あっち側に魔物は発生するはずがないからスムーズに来れるはずなのに。
「【雷魔法 雷の雨】ちょっと凛子!さすがにおかしいんじゃね?」
体力を回復させるために戻ってきた凛子に伝える。
「そうね。さすがにおかしいと思うわ。まさかとは思うけど、結界突破されたってことは??」
「ないだろ。俺が全力で作ったんだから。魔王だってなかなか壊せないぞ?」
魔王とはこの異常な魔物の大量発生を生み出した張本人といわれている人物だ。突然、大都市を大量に破壊し、人類に宣戦布告したという。まぁ、その時には俺はまだこちらには来ていなかったのだが。
「そうよねぇ。まぁ、いいわ。とりあえず、いったん帰ってみる?」
「ああ。なにかあったのかもしれねぇ」
俺たちは人類最後の都市 【ウィール】に帰ることにした。
「【ワープ】使ったら危険かもな。走っていこうぜ」
「わかったわ。でも、万が一みんなに何かあったら、一刻も早くいかなきゃ」
「だめだろ。もし、都市が魔王に占領されてたらどうする?」
「・・・怖いのよ。もし、みんなが死んじゃって、私たちだけが残されたら・・・」
凛子がふと暗い顔をする。
「しょうがないなぁ」
俺は凛子を抱きしめた。
「え?ちょっとなに?」
「大丈夫、みんなは俺が守るから」
「・・・・うん」
凛子が胸の中でうなずき、俺の背中に手を回す。
「でも・・・・・」
凛子のうでに力が入る。
「私たちで!よ」
「うぐ・・・・苦しい・・・凛子さん??」
「ふふっ。いきましょ」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
「はーいじゃない。はい!」
「おーい」
「つまんない」
「すいません!」
「はいはい。いくよ!」
「自分は言うし・・・」
「なんか言った?」
「いってません・・・・・」
俺たちはそんなこんなで都市に向かったのだった。