どんだけ厨二だよ
ビィーッ!
ビィーッ!
無機質なコンクリートの廊下に、警告音が鳴り響く。
ビィーッ!
ビィーッ!
『ショケイシマス』
ビィーッ!
「やばい!来たッ!」
「もう逃げ道が…!」
ビィーッ!
ビィーッ!
劈くような警告音を発しながら、“ソレ” は徐々に近付いて来る。
もう、生き残りはこの部屋に居る3人のみだ。
ビィーッ!
ビィーッ!
『ショケイシマス』
「やだヤダ!死にたくないよぅ!」
右隣の女が叫ぶ。
ビィーッ!
ゆっくり、だが確実に近付く警告音。
ビィーッ!
ビィーッ!
逃げ場は無いと知りながらも、徐々に近くなる音に無意識に後退る。
ドンッ
「…ッ」
背中が、壁にぶつかる。
周囲はコンクリートの壁に囲まれているだけで、他に何もない。
完全なる行き止まり、絶体絶命だ。
ビィーッ!
『ショケイシマス』
ビィーッ!
「クソッ…終わりか」
呟いた瞬間、部屋の入口から “ソレ” は姿を見せる。
『ショケイ、シマス』
「イヤ…!イヤァァァアァアアァァァァッッッ!」
破裂音。
音のした方に顔を向けると、隣に居た筈の女の姿は無く、そこにはただ、真っ赤な雨が降るだけだった。
「ぐ…うぅ…」
仰向けに倒れた女は白目を剥き、口から血液混じりの泡を吹きながらピクピクと痙攣している。
大きな穴を開けた腹部には、赤黒い池が出来ていた。
「ひ…ッ!うゎ…うわぁぁぁぁぁッ!」
『ショケイシマス』
女の腹を吹き飛ばした “ソレ” は、次にオレの左側に居る男に向き直る。
「やめろッ!やめてぐェッ」
男が叫ぶと同時に、男の顔の右半分が無くなった。
断面から吹き出した生暖かい液体が、オレの顔に掛かる。
男は膝から、うつ伏せ状態に崩れ落ち、頭の断面からは気色の悪い中身が流れ出す。
--次はオレだ
オレはそう思いながらもどこか冷静に、他人事のように、既にただの肉の塊に成り果てた二人と、ゆっくりとこちらに向き直る “ソレ” を観察している。
『ショケイシマス』
“ソレ” が、オレに一歩近付く。
『ショケイシマス』
また一歩。
『ショケイシマス』
オレは、静かに目を閉じる。
頭の中では、一昔前に流行ったハードロックが流れている。
--あぁ、懐かしいな
『ショケイ、シマス』
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