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化け物  作者: 椰子日たゆ
7/7

真実の探偵5

朝日はのぼり、小鳥の鳴く声を遠くに聞きながら俺は目を覚ました。

いつも通り事務所で起きた俺は昨日の話を思い出していた。

昨日は先生からあの猫の真実を聞きそのまま眠ってしまった。

「……先生?」

先生は出かけているのか姿が見えない、ソラさんも帰ったようだ。

俺は立ち上がりコーヒーを入れながらあの真実について考える。

あの猫はしおりという女の子に会えるのだろうか、化け物となった猫を見てあの子はどう思うのだろうか。

コーヒーを片手に椅子に座りテレビをつける、ちょうどニュースがやっていて俺は何を見るわけでもなくぼんやり見ていた。

「ーー〇〇町在住、田中京香さん27歳が殺人の容疑で逮捕されました。」

テレビに写された女性の顔に俺は覚えがある、先生が犯人と言った人物だ。

先生の能力は間違いなかったようだ。

しかし、俺はその後の内容に驚きを覚えた。

「ーー田中容疑者は市川夏美さんとその娘、市川詩織ちゃんを殺害したとしてー」

その内容を聞き俺は手に持っていたコーヒーを零してしまった。

「熱っ!」

「何してるんだ小泉君…」

いつの間にか先生は帰って来たらしく俺に呆れたような視線を送る。

「あっ先生、すいません…いやそんなことより!」

俺は今まさに聞いたニュースの内容について尋ねた。

「この事件の被害者の詩織って…」

「…………」

先生は何も言わない

つまりそういうことなんだろう

「じゃああの猫は……」

「来るはずも無く、会いに行くことも出来ないあの子をひたすら追い続けることになるな」

「そんな…どうにかならないんですか」

「ならない」

先生は冷たく淡々と俺の問に答える。

「そうですか……」

真実は残酷だ。

俺はその場にいるのが辛くなり零したコーヒーを片付けるため雑巾を取ってきますと言って部屋から出た。


俺が戻ってくると、先生は自分の椅子に座り携帯をいじっていた。

「そういえばソラさんは帰ったんですよね」

「あぁ、小泉君が寝てすぐに起きたよ」

「教えたんですか?」

「元々あいつから教えてもらった情報だからな、気になってると思って伝えといたよ。」

「何か言ってましたか?」

「……『帰る場所はもう無いのか…』って」

へぇ、と俺は興味があった訳では無かったが、その時の先生に何か引っかかりを覚えた。

「……先生、さっきまでどこに?」

「少し外の空気を吸いに言ってた」

「ソラさんは今どこに?」

「……知らないな、あいつは決まった居場所というものは無いから」

質問すればするほど、先生から答えを聞けば聞くほど、俺の中にある違和感は大きくなる。

「先生、俺今日もあの猫に会いに行きます」

「…そうか」

冷静に答える先生だったが、俺は一瞬強ばった先生の顔を見逃さなかった。

「先生何か隠してますよね」

「…………」

「先生、猫は生きてますか?」

先生は答えない

違和感の正体は簡単だ。


先生は嘘をついている


「猫は死んだんですね」

先生は答えない

「…『真実』の化け物だけあって嘘は苦手なんですね」

「猫は死んだ……いや殺した」

ようやく先生は真実を喋りだした。

「ソラの能力で跡形もなく消した」

「……どうしてですか」

「願いが叶わないならばと思ったまでだ」

「だからと言って殺すことはないでしょう」

「……」

「先生はそれが正しいとでも?あんたが全てを知っているからといって勝手に決めていいとでも?自分が何も間違ってないとでも?」

俺は先生に問いただした、いや責め立てていた。

「なんか言えよ!」

先生は俺を見ずに俯くばかりだ、何も言う気はないらしい

俺は舌打ちして手に持っていた雑巾を投げつけて事務所を出ていった。

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