非凡で平凡な冒険者さんの恋2
安心したかのように俺の腕の中で眠るこの少年の顔を眺めながら、微笑みつつ綺麗にしたふわふわな髪を撫でながら冒険者組織の敷地内の定位置で、少年を抱えて座っていた。
幸助の定位置は俺の前の席で、微笑ましいものを眺めているかのように、穏やかな表情をしている。
……お嫁さんになるとは言え、冒険者組織は優秀でなければ俺がいない時、この敷地内にいることが出来ない。優秀な部分は冒険者としての能力が高いからと言う理由だけではなく、違う能力が“優秀”でもマスターに気に入られることが出来たなら、この組織に入る資格をもらえる。
この少年にも……と言っても、この子身体を綺麗にしてやったらとても容姿が整っていたけれど、他にも人とは違う“才能”を持っているとマスターも冒険者組織に入れやすいと思うんだけどー……とそう考えていると、言葉にならない声を出した後に眠りから覚めた少年はとろけたような微笑みを見せた。
挨拶を交わした後、
「寝起きのところ悪いね、ここは冒険者組織の敷地内なんだ。貯えがあるから別に仕事は行かなくて良いのだけど……、残念ながら俺ある程度名が知られているから指名が来たりするの、一人でいるのは不安だろ? だから冒険者組織に入ってもらおうと思って、……何か特技ある?」
そう聞いてみると、怯えたような目をしながら肩を小刻みに揺らした少年。
……ああ、秀でた部分があるからこそ、誰かにこの少年は傷つけられていたんだと俺はそう気づいた。
だから、そんな少年に俺はこう言った。
「怯えないで。ここはね、困っている皆を依頼を受けることで助ける場でもあるけど……、ここは秀でた何かを持つ人を守るための場所でもあるんだよ。
だから、そんなに怯えないで……。誰ももう君を自分の得させる“道具”として見ている人はいないよ。
……だって、君は俺のお嫁さんでしょ?」
と、そう言えば少年は頷いてくれた後、……とても綺麗な声でこう言った。
「僕は葵って言います。自慢出来ることは歌を歌うのが得意です」
その声を聴いて直ぐにわかる。少年……いや、葵は歌を歌うことでどれだけの人を魅了出来る力を持っていることくらい、地声からそのことが感じられる。
「うんうん、葵なら確実に冒険者組織の一員になれるよ。俺には勿体ないくらいの随分と“自慢な嫁さん”だしなぁ。綺麗な声をしてて、綺麗な容姿をしてて、尚且つ素直な性格をしているお嫁さんに出会えて、俺はとても幸福者です」
そう言ってやれば、頬を赤く染め上げて葵は微笑んでくれた。
後日、マスターに会ってもらい、思った通りすんなりと冒険者組織に入ることが出来た葵は、とろけたような可愛らしい微笑みを浮かべていたのはまた別の話。