騎士を目指す君に恋をする2
僕も一緒に残ろうか? と心配そうに言ってくれる露理先輩の言葉は有難いけど……、迷惑をかける訳にはいかず断れば、それでもなかなか諦めきれない部分があったのか……、
「今は非常事態だもん、後で魔法使用したことは担任に説明してくるから!
あの先生は白雪の事情もわかってるし、今回だけは見逃してくれると思うから、一通り万が一のために白雪を護るための“魔法”をかけておくからね?
でも良く聞いてね、“魔法”は人の心までは護れない、例え白雪に酷いことをしたのが人であっても、白雪の心を救ってくれるのも、同じく人なんだよ?」
と、露理先輩はそう言って会長の腕に抱き着きながら帰って行った。
先輩達に言われた通り、鍵の施錠することを忘れずにしておいた。
その数分後、露理先輩に居てもらえば良かったと僕は後悔した。
魔法科のあるこの学園の次席の成績である露理先輩がいれば、“彼ら”の暴走は防げたかもしれない。
「なあ、白雪? お前は俺が大事に守ってきた姫様なのに……、何で他の男ばかりを考えているんだ?
なあ、白雪? 俺がどんな気持ちでお前のことを守ってきたかわかる?
わからないだろう? 外見だけで格好良いって判断せず、内面を見てその人の良さを判断する俺は白雪が好きだよ、だからこそ出来るだけ外見は平凡でも内面には良さを持っている楽都を近づけたくなかった!
いつか楽都に会って、白雪は惚れていくってわかってたから近づけないように護衛してたのに…………!
楽都と白雪は出会ってしまった、現に白雪は楽都を意識してる……!」
ああ、俺はこんな幼馴染みを見たことがない。ここまで若干狂いかけた言葉を並べて、そこまで独占欲が生まれるまで俺は何故、輝昭の気持ちに気づけなかったんだろうか……?
いや、違う。輝昭が意図的に気づかせなかったんだ、外堀を埋めるかのように静かに着々と僕を一つの選択へと追い込もうとしていたんだ……。長年、輝昭と幼馴染みをしてたからわかる、何処か腹黒い部分を持っていたことには気づいていたから。
「だから、お前を襲いかけた魔法使いを雇ってね、いっそ自分のものにならなければ誰の手にも渡らないように……、殺してしまおうと思ったんだ。
例え、自分達に殺人者になってしまおうとね、お前が誰のものにもならなかったら、それで構わない」
恐怖で声が出なくて、助けを呼ぶことすらも出来なくなってしまう。
もう、二人の姿なんて見たくない――……とそう考えた瞬間のことだった。
勢い良く生徒会室のドアが蹴り飛ばされて、そこには軽く汗を掻いた青川くんと床にへばっている露理先輩の姿があり、一安心した瞬間に僕は輝昭の懐刀で腹部を刺されたのだ。
「早く手当てしないと、白雪は貧血体質だからな。……死んでしまうぞ?」
と、高笑いをしながら輝昭は魔法使いを連れて、生徒会室から去ってった。
その姿を見た後、意識が遠退いていく中……、僕の手のひらは誰かに包まれるように握られた後、腹部に春の日差しに当てられているような暖かさを感じ、その後意識を失ったのだった。