騎士を目指す君に恋をする1
貴方と初めて言葉を交わした時、……無防備な人だと思った。
貴方を担当する覆面風紀委員を表向きでは責めつつも、羨ましいと思った。
無防備で綺麗に微笑む貴方を……、護ってあげたいとそう思ってしまった。
この気持ちの正体は、今の俺にはわからない。いや、わからない振りをしているだけかもしれない。
◇◆◇◆◇◆
「会長〜、しっかり仕事して下さいよー」
低身長で、同性だと思えないくらいに可愛らしい顔つきをしている副会長、芳沢 露理先輩は会長ことが大好きで片想いをしてるんだけど、普段違う人と接している時よりもスキンシップが多いと言うのに鈍感な会長こと東雲 鞍人先輩は気づかない。
あんなに純粋に、好きな人にアピール出来るなんて羨ましいなぁー。
……別に好きな人はいないのだけど……、でも青川くんって格好いいよね。
戦っていた姿や目付きとか、襲われそうになった僕に対して気遣い、叱ってくれるんだもの……って何で好きな人の話をしてたのに青川くんのことを思い出してるんだろう!
ああ! そうだ、青川くんは助けてくれた恩人だもんね、きっとそうだよ!
「めっずらしー! 白雪が百面相してるー、恋のお悩みかなぁ? ならお兄さんが聞いてあげよう!」
と、恋の話になると直ぐに食いついてくる露理先輩は、僕の脇腹を人差し指で突っつきながら、もう片方の手は肩に腕を回して肩を組ませてきた。
――あれ? 何か勘違いされてる?
と、そう思いながら慌てて露理先輩の言葉を僕は否定する。
「違いますってば!」
「違わないでしょー、お兄さんにはわかっちゃう! 例え今は恋じゃなくても、それに似た感情であることくらいね、同じく恋している僕にはわかるよ?」
否定しても一枚上手な露理先輩にそう言われた瞬間、返す言葉が浮かばなくて唾を飲み込んでしまう。
その瞬間、たまたま視界に入った会長は何処か動揺しているように見えた。
その理由がわからず、僕は思わず首を傾げていれば生徒会室にノックもなしに誰かが入って来て、そんなことが出来る程に神経が強かな人は一人しか心当たりがなくて、……それは勿論僕の護衛を担当する覆面風紀委員の安藤 輝昭しかいなくて。
副会長は流石だね、と毎度のごとく輝昭に対して感心している。
輝昭は僕の幼馴染みで、美形を見慣れすぎて全く興味が沸かなくなってしまい、幼い頃はしょっちゅう誘拐されていた僕のせいで、懐刀を扱うのが上手くなったり、薬物に詳しくなってしまったりと何かと迷惑を被らせてしまっていて、とても申し訳ないと思っているけど……、それすらも全然気にしてない性格も男前、少し変わった色気を放っている男前よりの平凡顔をしているこの幼馴染みは今も変わらず側にいてくれている。
「どうしたの、輝昭?」
「……今日は絶対に生徒会室から一歩も出るな、わかったな?」
と、人前ではあまり見せることのない、護衛としての態度ではなく幼馴染みとしての思いが込められたその言葉に圧倒されて、僕は操られたかのように首を縦に振ってしまった。
感情をあまり見せることがない、幼馴染みがああ言っていたんだし、その判断に従うのが一番だろうとそう思ったから、まさかそう判断したことが間違いだったなんて……、思いもしなかったのだ。