魔法使いの不器用な恋 後編
不器用な先輩が可愛らしいと思っているのは、本当だ。……でも、恋人同士でも一定の距離を保っていたのは別の理由で、そのせいで先輩に嫌われたくなったのが本音なんだ。
でも、葵くんに言われて決意した。
怖がられてももう一度、俺のことを先輩に好きになってもらおうと。
◇◆◇◆◇◆
「先輩、俺貴方に話してないことがあるんです。聞いてくれませんか?」
と、真剣な表情をしながらそう言ってきて、そんな表情に圧倒された俺は気がついてたら頷いてた。
……どんなことを言われようと、碓氷を好きでいようと決意して。
言われたのは、
「俺、貴方と出会う前は暗殺者をしてたんです。黙っててすみません」
そんな言葉だった。
……え? それ本人から聞かされてなかったっけ? そのせいで一定の距離を保った状態だったの?
「俺、知ってたよ? 知ってて碓氷のことが好きだったから、ここまで追いかけて来たんだよ……?」
そう言った瞬間、知っていたことに対する驚きからか、それとも暗殺者だったとしても好きだと言った珍しく素直な言葉を聞けたことに対する驚きか、それとも両方からくる驚きからなのか……、俺にはわからなかったけど目の前にいる碓氷が愛しくて、包み込むように抱きしめれば独り言のような小さな声でこう聞いてきた。
「いつからそれを知ってたんですか……」
「初めてあったその日。隊自体は違うけど、君より立場が上な人の中では一番君に年齢が近かったから、任された時に君の上司からそう聞かされたんだ」
と、聞かれるがままに白状すれば、それで最初警戒されていたんですね……と納得したかのようにそう呟いた後、抱きしめていた腕を掴まれて、逆に抱きしめられる体勢になった後、鎖骨に唇を押し当てられて、その部分だけ自分の肌が赤くなるのを見て、急に恥ずかしくなってきて……。
「何すんだよ! 馬鹿、スケベ!」
素直じゃないことを言ってしまったが、珍しく碓氷が微笑んでー……。
「それでも俺を好きでいてくれますか?」
そう真剣な表情でそう聞かれてしまえば、俺は素直に頷くしかなかった。