魔法使いの不器用な恋 〜プロローグ〜
ため息をつくこの青年、幸助はかつては王族専属の魔法使いでは“最強”と呼ばれていたのだが、恋人を追いかけてこの冒険者組織に所属することになったと言う、一見積極的に見られるような大胆な行動をしたように見えるのだが、本当は強面ながらも小動物のような仕草をし、健気な青年なのだが、好きな相手だからこそ素直になれないと言う悩みを抱えていた。
そんな幸助を微笑ましそうに見守るのが、親友の柊とその親友のお嫁さんである葵だった。見ている方が照れてしまうくらいに溺愛し合っていて、そんな関係を幸助は羨ましく感じていたのだが、恥ずかしくてそれを恋人である碓氷に素直に伝えられないかった。
ともかく、見ての通り幸助は最強の魔法使いと呼ばれても……、恋に対しては不器用なのだった。
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……好きなのに。
どうして伝えられないんだろう、素直な態度をどうにかして伝えなければ、モテる碓氷に見捨てられてしまうかも……と考えていれば柊にクスクスと笑われる。
「言葉で伝えるのが難しいなら、行動で伝えてみれば? お互いに思い合っているのはわかってんだから、それで伝わると思うぞ。でも、そうすることに頼りっきりでは駄目だぞ、たまには勇気を出して素直に自分の気持ちを言ってみな」
と、柊にそう言われ、俺は少しだけ頑張ってみようってそう思った。