平凡な教師に恋をして4
青川先生は全身の力が抜けたように寄りかかってきて、流石に小柄な俺では結構身長のある青川先生を支えきれずに床に崩れるように座り込んだ。
だけど、青川先生は俺を離そうとしてくれなくて、とても戸惑った。
……これじゃ、まるで告白されたことを嫌がってないみたいじゃないかと。
「青川先生……?」
返事のないことに疑問を持ち、名前を呼べば、青川先生は余計に首筋に額をすり寄ってきた。……まるで甘えるように、寂しかったと訴えるように。
それでも青川先生が俺のことを好きだと言う確信は持てなくて……。
こうされることが耐えられなくて、思わず青川先生を自分の身体から引き離して側から逃げようと試みたけれど、後ろから包み込むように抱き締められた。
……ああ、間違えない。この人はただのヘタレじゃない、流石は楽都の兄貴である。同性さえも見とれてしまう、容姿なんて関係ない魅力を持っている。
「……逃げるな」
聞いたことがないくらいに低音で、惚れた弱味で動けなくなってしまう。
……いつもはヘタレなくせに、ここぞとばかりに男らしさを見せるなんて、逃げられる訳ないじゃないか。
「……この前言ったことは嘘。生徒以上の思い入れがあるから、紅葉を放っておけない。放っておけって言われて傷ついたから、ああ言ってしまって泣かせたなら謝る、ごめんね?
紅葉に避けられて授業がどうでも良くなったけど、情けない姿をまた見られて嫌われるのが嫌だった。
僕も好きだよ。紅葉のためなら教師だってやめて、なりたくなかった賢者にだってなれるくらいに好きなんだ」
そう言われてしまったらもう諦める必要がないと思ってしまうじゃないか。
◇◆◇◆◇◆
「本当にご迷惑をおかけしました……」
と、楽都に土下座している青川先生と言うのはとても異様な光景で。
怒りに満ちた表情から一変して普段の優しげな表情に戻る楽都。
「あのなぁ、紅葉は俺に対しては素直だけど、兄貴のことは本当にそう言う意味で好きだから照れ隠しで素直になれないだけだから自信を持てよ、兄貴。
兄貴が思っている以上に紅葉は兄貴のこと好きなんだぞ?」
雪野さんを撫でながら楽都があっさりそんなことを言うもんだから、俺は頬を真っ赤にさせられたのだった。
これで隼人と紅葉の話はとりあえず終わりです。四組目は「非凡で平凡な冒険者さんの恋」に出てきた碓氷と幸助の話となっています。四組目が書き終わったら隼人と紅葉の恋人になった話を書きたいと思っています。