平凡な教師に恋をして2
……折角、楽都がチャンスをくれたのに今回はまだマシ、素直になれたから。少しだけ素直になれたけど……、また最終的には強気な態度を取っちゃった。
……もっと嫌われちゃった、よね……?
まあ今更、嫌われたところで関係性が変わる訳じゃないしー……。
「……どうしたら良いんだろう……?」
「何がです?」
返事が返ってきたことに驚き、顔を上げれば目の前には青川先生の顔があって、俺は瞬時に顔を背けて真っ赤になったこの頬を隠すのに必死で、また思ってもないことを口走った。
「……お前には関係がないことだ、俺なんか放っておけよ!」
違う、これは嘘。
お願い、放っておかないで。楽都の代理でも良いから側にいて……。
「放っておける訳ないでしょ、……僕は君を教える教師だから」
その一言が嬉しくて、でも教え子としか見られてないことがわかる一言でもあり、……悲しくて。
「……凄く、悲しい」
これは本音だった。
俺はその一言言って、この場から逃げ出した。完全に逃げ出す前に、無理して青川先生の方へと振り返って、何もなかったように明るく演じてこう言った。
「……もう良いよ、青川先生。俺自分の身くらい自分で守れるし、青川先生が居なくても平気だから教師の役目に集中しなよ。教師の仕事だって忙しいんでしょ? 前から言おうと思ってた、男なのに女扱いされてるようで嫌だったし」
……今言ったこと全部嘘だよと内心で叫びながらも、逃げるようにこの場から去ったのだった。
◇◆◇◆◇◆
迷惑かな? そう思いながらも、雪野 白雪と書かれた部屋のチャイムを鳴らせば少しだけ機嫌が悪そうに出た楽都は、俺の顔色を見てすぐさまに顔色を変えて中に入れてくれた。
雪野さんは凄く嫉妬する気持ちを抑えているようで、とても申し訳なくて。
でも、お互いに気持ちが通じあっていることが俺も羨ましかった。
「雪野さん大丈夫ですよ、楽都は俺にとっての恩人でもあり、親友なんです。
唯一、男として接してくれて親友になってくれて、楽都には俺は友人以上の気持ちは抱けないんです。
俺が好きなのは青川 隼人の方です、……でも俺振られちゃいました。
告白はしてません、でも振られたのも同然です。だって、目の前で『放っておける訳ないでしょ、……僕は君を教える教師だから』って言われたら、生徒としてしか見られてないってことじゃないですか。でも安心してください、俺はきっとあの人以上に好きになる人はいないと思うから」
と、そう言えば雪野さんは俺に向ける視線に嫉妬心が含まれなくなった。
そして何故だろうか、俺じゃない方向をひたすらに優しげな視線で眺められていて、その方向を見て見れば怒りに満ちた表情を浮かべる楽都の姿があった。
「あんのッ、クソ兄貴!
鈍感にもほどがある、紅葉のために嘘ついたくせにこんなにも傷つけて!
紅葉、あの馬鹿兄貴を全力で避けろ! 喋りかけられても喋らなくて良い! 最低でも三日は避けろ、あの馬鹿が泣き言を言うまで徹底的になッ!」
あまりに怒りに満ちた表情に、俺は頷くことしか出来なかった。
でも俺に避けられたって、別に教師としてしか見てないって言っていたもんだし、ましてや嫌っている生徒だもん、青川先生が泣き言言うわけないじゃん。
「……もう、どんな行動をしたって俺が虚しいだけなのに……」
そんな言葉を聞いて、雪野さんと楽都は何も言うことはなかった。