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騎士を目指す君に恋をする プロローグ

 雪野(ゆきの) 白雪(しらゆき)は身を持って知った、……行き過ぎた愛情は時に凶器になりうると。

 見知らぬ生徒に空き教室まで追い込まれ、嬉しくもない壁ドンまでやられて、貞操の危機だ。むしろ失いたくないものを失ってしまう可能性の方が大きい。

 ――獣のような視線で見られ、好きな相手ならまだ良いよ? ……だけど、見知らぬ同性からとなれば何処にそのような視線で見られて、恐怖心を抱かず、胸を高鳴らせる奴が居ると言うの。むしろ、別の意味合いでなら胸が高鳴っているけど、悪い意味で!

 と、白雪がそう考えていた瞬間に見知らぬ生徒は顔を寄せてきて……、恐怖で足の力が入らないために、鳥肌が立つのを歯を噛みしめて耐えていれば、誰かが来たと気配もわからずにいきなり不機嫌そうな声が聞こえてきたのだ。


「性的暴行は退学処分、例え未遂でも警察沙汰になることを覚悟するんだな」


 その声に覆い被さるように押し倒してきた見知らぬ生徒は、ひぃっ! ととても情けない声を出してここから逃げようとするが、何処からか槍を取り出し、刃がない方でうなじ部分を的確に攻撃し、一撃で気絶させてしまった。

 白雪の方には見知らぬ生徒は倒れ込んでこず、安堵のあまりそれと同時に、今まで良く耐えたと称賛してしまいたい程に、まるで麻酔を打ったかのように腰から下の力が抜けていく。

 ――男として、失ってはいけないものを何とか守れて良かったー……。

 と、安堵しながらそう考えていれば、自分の意志関係なく涙が溢れてきた。

 そんな白雪の様子を見て、助けた生徒は驚きのあまり目を見開いたが、直ぐに冷静さを取り戻して近くまで駆け寄り、安心させるためか顔が見えるようにしゃがみ、親指のはらでその涙を拭う。


 そして一言。

「ちっ、会計様の覆面風紀委員は何やってンだよ、まったく……」

 その言葉に白雪はとても驚いていた。

 覆面風紀委員は護衛対象、生徒会、風紀委員、当本人しか知らないはずであり、会計の役職をもらっている生徒会に白雪が風紀委員に所属していれば知らないはずはないし、この生徒は平凡顔であるため護衛対象でもないだろうから、彼は覆面風紀委員なんだろうとそう考えていた。

 そして担当ではないのに、助けてくれたことを白雪は嬉しくも思った。


「ありがとう。君がいなかったら僕、僕としていられなかったかもしれない。

そんな君はとても、格好良いと思うよ」


 と、思わず無防備に笑いながら白雪はそう言えば、その生徒は照れていた。


「良いですか、会計様。無防備に笑ってはいけません、特に貴方はです!」

「ああ、ごめん。普段はちゃんと気を引き締めているのだけどー……、ついつい気が緩んでしまって」

 と、敬語に直したと言うことは恐らく後輩であろうこの生徒に怒られた後、白雪は申し訳なさそうにそう言えば、はあと大きなため息をつかれてしまった。

 これが雪野白雪と、覆面風紀委員として活動している生徒である青川楽都(あおかわらくと)の出会いだった。


◇◆◇◆◇◆


 そして生徒会にて。

「あの人、とても格好良かったなぁ」

 と、自分を護衛してくれている生徒に話せば、すみませんと謝った後、

「楽都は性格が男前ですからね、会計様も惚れてしまいましたか?」

 そう聞けば、照れもせずに白雪は言う。


「そうかもね、まだ恋とはわからないけどー……、同じ人としては惚れたね」



次話から一人称です。

プロローグのみ、三人称で書きます。

よろしくお願いします。



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