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「なっ、何をやってるんだと言われましても……」
どぎまぎしながら、言葉をさがす。心臓がばくばく音を立てていた。
「いいから! 何をしてるのか、説明しろよ。おれも、よくは知らないんだからさ」
堀越の強い語調に押し切られる。
「あ、うん……」
しかたなく、状況を話すことにした。
「えっ、絵の! 絵のモデルをしておりますだに」
緊張しすぎて、語尾がおかしくなってしまった。
ところが、そこには言及せず、
「絵のモデル?」
堀越とあやのさんが二人そろって声を出した。
「雑用しているんじゃなくて?」
「はい、ひたすら、じっとしてます。動くと怒られるんで」
あやのさんの問いに答える。間を入れず、堀越が質問してきた。
「なんにもしてないのか?」
「なんにも。あ、もちろん息はしてるよ」
「息を吸って、吐くだけなのか?」
「おう。息を吸って吐くだけだ」
とんちんかんな質問に対し、真面目に切り返すおれ。
ん? おれは何か変なことを言ってしまったのでしょうか。二人とも困惑している様子だ。
二人の顔を見ながら、ごくり、と唾を飲み込む。おそるおそる仕事の内容を具体的に説明した。
「いろいろ指図されながら、ポーズをとってるんだ。それをあの人がスケッチして……。モデルだと思って甘く見てたけど、動かないでじっとしてるのって、けっこう大変なんだな。体のあちこちが痛くてさ。ほんと、まいったよ」
堀越の口元がひくついているところを見ると、何か言いたいことがあるのだろう。だけど、言葉にならず、どうしようもないっていう感じだ。
ぐうの音もでなくなったという言葉は、こういうときに使うのかもしれないな。
堀越は頭をかいた。
「おれ、てっきりアシスタントがいるんだと思ってたよ。春夏冬さん、特に理由を言わなかったしな」
あきないさん?
おれの耳は、すばやく反応した。
「あの人、あきないさんて言う名前だったんだ。へえ、変わった苗字だな……」
おれのつぶやきを拾ったのは、堀越ではなくあやのさんだった。
「ええ。春、夏、冬と順番に書いて、あきないさんと言うのよ。わたしと同じ高校の出身なの。わたしは、桃ちゃんと呼んでるんだけどね」
「もっ、もっ~?」
驚きすぎて、思わず口から声が漏れてしまった。
あの強面な顔に似合わず、かわいらしい名前だったからだ。いや、不意打ちを食らった、さっきのやわらかな笑顔は、すごくかわいかったのだけど――。
そうかあ。桃ちゃんなのかあ。
なんだか口の中がむずむずしてきた。ぐいっとお茶を飲む。
「あのさ、もしかしたら言ってはいけないのかもしれないが。この際だ。思いきって言うよ」
堀越が話に割り込んできた。
「なあ、おれさ、おまえにどうしてバイトを頼んだのか、言ってなかっただろう?」
「う? うん」
「実は、春夏冬さんに頼まれたからなんだよ。ぜひ、おまえにアシスタントを頼みたいって言われたんだ。これって、いったいどういうことなんだろうな!」
堀越は、ふふんと鼻を鳴らした。