表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クライマックスなう!~彼女の秘密とおれのうそ~  作者: このはな
1.トホホなおれのバイト始め
8/27

「なっ、何をやってるんだと言われましても……」

 どぎまぎしながら、言葉をさがす。心臓がばくばく音を立てていた。

「いいから! 何をしてるのか、説明しろよ。おれも、よくは知らないんだからさ」

 堀越の強い語調に押し切られる。

「あ、うん……」

 しかたなく、状況を話すことにした。

「えっ、絵の! 絵のモデルをしておりますだに」

 緊張しすぎて、語尾がおかしくなってしまった。

 ところが、そこには言及せず、

「絵のモデル?」

 堀越とあやのさんが二人そろって声を出した。

「雑用しているんじゃなくて?」

「はい、ひたすら、じっとしてます。動くと怒られるんで」

 あやのさんの問いに答える。間を入れず、堀越が質問してきた。

「なんにもしてないのか?」

「なんにも。あ、もちろん息はしてるよ」

「息を吸って、吐くだけなのか?」

「おう。息を吸って吐くだけだ」

 とんちんかんな質問に対し、真面目に切り返すおれ。

 ん? おれは何か変なことを言ってしまったのでしょうか。二人とも困惑している様子だ。

 二人の顔を見ながら、ごくり、と唾を飲み込む。おそるおそる仕事の内容を具体的に説明した。

「いろいろ指図されながら、ポーズをとってるんだ。それをあの人がスケッチして……。モデルだと思って甘く見てたけど、動かないでじっとしてるのって、けっこう大変なんだな。体のあちこちが痛くてさ。ほんと、まいったよ」

 堀越の口元がひくついているところを見ると、何か言いたいことがあるのだろう。だけど、言葉にならず、どうしようもないっていう感じだ。

 ぐうの音もでなくなったという言葉は、こういうときに使うのかもしれないな。


 堀越は頭をかいた。

「おれ、てっきりアシスタントがいるんだと思ってたよ。春夏冬あきないさん、特に理由を言わなかったしな」


 あきないさん?


 おれの耳は、すばやく反応した。

「あの人、あきないさんて言う名前だったんだ。へえ、変わった苗字だな……」

 おれのつぶやきを拾ったのは、堀越ではなくあやのさんだった。

「ええ。春、夏、冬と順番に書いて、あきないさんと言うのよ。わたしと同じ高校の出身なの。わたしは、ももちゃんと呼んでるんだけどね」


「もっ、もっ~?」


 驚きすぎて、思わず口から声が漏れてしまった。

 あの強面な顔に似合わず、かわいらしい名前だったからだ。いや、不意打ちを食らった、さっきのやわらかな笑顔は、すごくかわいかったのだけど――。

 そうかあ。桃ちゃんなのかあ。

 なんだか口の中がむずむずしてきた。ぐいっとお茶を飲む。


「あのさ、もしかしたら言ってはいけないのかもしれないが。この際だ。思いきって言うよ」

 堀越が話に割り込んできた。

「なあ、おれさ、おまえにどうしてバイトを頼んだのか、言ってなかっただろう?」

「う? うん」

「実は、春夏冬さんに頼まれたからなんだよ。ぜひ、おまえにアシスタントを頼みたいって言われたんだ。これって、いったいどういうことなんだろうな!」

 堀越は、ふふんと鼻を鳴らした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ