プロローグ
朝テレビで見たランキング星占いは十二星座中、最低だった。
母ちゃんの卵焼きを食ったら、口の中で殻が砕けてジャリッとしたし。駅へ向かう途中、犬の落とし物を踏んづけたし。
あわてて家に戻り靴を替え、ホームまで走ってみれば、踏切の故障により電車がストップだ。
「どうしてくれる! 大事な会議に間に合わなくなった! 責任とってくれっ!」
駅員に食ってかかったサラリーマンの拳が、なぜだかこっちに飛んできて。
「ひいっ」
目を閉じたのと同時に、すさまじい力でおれの横っ面を直撃した。
「ぐふおうっ」
スローモーションで宙を舞う血しぶき。
ふらっと意識が遠のく――。
「だっ、だいじょうぶですか? お客さん!」
「うわ、救急車! だれか110番しろっ」
きゅっ、救急車を呼ぶなら、119番でしょう……!
――と、心の中だけでツッコムことしかできなかった、そのときのおれ。
せめてヤブ医者のところへ運び込まれませんように……と、担架の上で必死に祈った。
あーあ。おれの人生は、いつもこんなものだ。いいことなんか、ぜんぜんない。
だけど、一度くらいリア充を自慢してみたい。おれの人生、クライマックスなう! って。
だから、神さま、頼んます。哀れな子羊にお恵みをっ。