第1話:旅立ち
俺の名は雷鬼[らいき]
後に皆は、俺の事を[赤眼の弐刀鬼]と恐れるようになる。
幼い頃から剣術・弓術・馬術・兵法を父に習い、父の戦を何度も見に行き、その勇猛な姿を何度もこの眼に焼き付けた。
俺が15歳になった年の十五夜の夜、突然父に呼び出された。
「雷鬼よ主ももう元服を迎えた。次の戦、父と共に戦え!」
幼い頃から父の勇猛な姿に憧れていた俺は何の迷いもなく了解した。
「御意、父上話しと言うのはそれだけですか?」
「うむ。」
「それでは失礼する。」
それから今まで以上に訓練をつんだ。
そして…
「最近農村を山賊共が荒らし回ってるそうだ。雷鬼支度をせい、賊共を蹴散らしてやろうじゃないか。」
「父上、賊の戦力はどの位の物なのですか?」
「軽く五百はいるだろうのう。まあ大したことはない、相手はただの賊だ。」
「なるほど、すぐに支度をして参ります。」
支度が終わると、父と俺、配下千人の兵士を連れて山賊に襲撃されている農村へと向かった。
農村に着くと目を覆いたくなるような光景が眼下に広がっていた。
家は焼かれ、若い女は連れて行かれ、老人と男、子供は無惨にも殺されていて、村人の悲鳴と賊共の卑劣な笑い声だけが聞こえるだけだった。
「酷い有り様だな、皆の者情けはいらん、賊共を蹴散らしてやれ。儂も先陣に立って賊を懲らしめてやるわい。」
「父上私も先陣に立ちます。」
「雷鬼、お前は後から援護してくれ。」
「私は父上のそばで戦いたい。」
「わかってくれ雷鬼、お前の剣さばきは認めるが戦慣れしてないからな。」
「…御意。」
「では突撃。」
俺達は農村を襲う山賊に猛攻をかけた。
「おい見ろよ、あの旗本は火斬軍だ。思った通り出て来やがった。待機させておいた仲間を呼べ、山賊の恐ろしさ思い知らせてやろじゃねえか。」
先陣にいた父達は山賊に完全に囲まれてしまった。そして…
「大将の首とったぞ。」
「風鬼様がやられた。雷鬼引き上げよう。」
その時俺は怒りで我を忘れ、勝利を噛み締めている山賊の中へ突っ込んでいった。
「若までやられてしまう、全員若を助け出すんだ。」
助けが来たけれどそれ不要だった。
「お前達の頭の首とったぞ。」
まさに神業だった。
「何だあいつは、」
「赤い眼をした鬼だ。」
この事があってから[赤眼の弐刀鬼]と噂されるようになった。
「父上の葬儀を行う。」
父上他賊との戦いで死んだ者の葬儀をしめやかに行った。
「聡守…すまないが俺は旅にでる。城を頼む。」
「雷鬼様。」
「何も言うな聡守。信頼できるお前だから任せたい。俺の留守を任せたよ…。」
そう言って俺は家来の聡守に城を任せ旅にでる事にした。