神隠しから落とし子へ
ここはエルディラン王国。
農業中心の素朴さが売りのちっちゃな国。
小じんまりしたお城に王様がいて、その周りはヨーロッパの街並みを思わせる城下町。
外国旅行もしたことがない私には、見るものすべてが珍しい。
そして、地球産 国籍日本 出身東京の私にも優しい国。
どうやって異世界に来たかは、本当にあっという間で訳がわからない。
車にはねられてもいないし、自殺もしてない。
ましてや足元に魔方陣も出ないし、コスプレまがいの人の迎えもない。
我が家の廊下を歩いていたら、すかっと床が抜けた感覚になってそのままフリーフォール。
落とし穴作ったの誰!?と思いきや、すとんと落ちたのは石畳の上。
周りを見まわすと、どっかのテーマパークを思い出す建物。
詳しくないけど、ドイツとかフランスっぽいとこでした。
いきなりのことに頭真っ白でぽかーんと口を開けているところに、わらわらと兵隊さんらしき人達が駆け寄って来た。
どっきりの看板でも出すのか見守ってたら、あれよあれよという間にお城に連れられてました。
きれいな応接室に案内され、真面目そうな係官の方からの説明によると私は
「神様から譲られた愛しい落とし子」だそうです。
なんでもこの世界には時々別の世界の人が突然現れることがたまーにあり、その人達は新しい知識や技術を使い、周りに幸せを運ぶ存在になるとか。
そして、落とし子自身もこの世界に愛され幸せに暮らしましたとさ。という童話に出てきそうな話らしい。
なので、国の宝となりうる落とし子を発見したら速やかに丁寧にスマートに対応するシステムが整っている訳ね。
もしや国のために働かせられるのかと思いきや、そんなこともないらしい。
落とし子は基本、自由に生活させないと神様から天罰が下ると言われているので、国が何かをやれとか要求することはないとか。
良かったー、魔王討伐とか王族の嫁にされそうになくて。
ここでなら、私生きていけるかも。