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P40

「いい子? すごく邪魔な子じゃなく?

 一晩中泣かれて付き合うなんてまともじゃないだろ。今日だって学校なのに」


「いっち」


少し怒ったような湊の声に、言葉を止める。修は少し悲しそうな顔でいう。


「昨日はたまたまだよ。

 確かに、唯が寂しかったり不安だったりしたら、ほっておけない。

 でもそうやって僕に甘えてくれたり、なにか手がかかったりしても、

 唯を邪魔だなんて思ったことないよ」


修の彼女なら、きっといいやつなんだろう。

僕は修ほど彼女を知っているわけじゃない。

だいたい、あのままの彼女を修が好きだったとして、何の問題がある?

僕がとやかく言えることじゃない。なのに、止まらない。

よりによって、なんで、あんな。


「そんな面倒くさいやつじゃなくてさ、修だったら、もっといい子いるでしょ。

 そんなのとっとと捨てて、新しいの探せば」


吐き捨てるように言う僕に、先に反応したのは湊だった。


「いっち、いい加減にしろよ、なに突っかかってんだよ」


「いま、何ていった? 捨てろとか新しいのとか」


怒りに震える修の声に、気まずくて視線をそらす。

いきなり制服の肩の辺りを掴まれて引かれた。驚いて修を見る。


「唯の代わりなんていない。唯より、大事なやつなんて。

 あいつの事何も知らないくせに」


なんだよ、それ。そんなに唯が大事か。涙が溢れそうになる。

修の手を振り払って、荷物を掴むと教室を飛び出した。


マンションでぼうっとしていると、湊が来た。


「何を、修に突っかかってんだよ」


言葉が出ない。しばらく沈黙が続く。


「どうすんの?」


「どう、って?」


湊の言葉に、問いで返す。


「お前が、どうしたいかって事」


何が言いたいんだ。もしかして、こいつ。


「前に」


以前から疑問に感じていた事を聞いてみよう。


「いい加減な手で、修に触るなって言ったよね。

 この部屋に来る女との事、隠せって。あれ、なんで」


湊は、ああ、といって視線をそらして続けた。


「別に、たいした意味はない。

 修はそういう事、知りたくないだろうなって思っただけ。

 あいつは何て言うか、女とどうこうとか、そういう事に。

 んー、なんか、だめなんじゃないかと思う。これも、トラウマレベルで。

 直接聞いたわけじゃないけど」


「不潔、とか?」


「そんな感じかな。普通の、恋人とかそういうのじゃなく、遊びで、とか。

 潔癖なのかな」


湊の言葉が珍しく歯切れが悪い。そっか、と曖昧に答える。


「あのさ、修とダチとしてやっていきたいんなら、

 謝っておいた方がいいと思うぞ?」


わかってんだろ? という。やっぱり、気付いていたのか。

うん、と言った途端、涙がこぼれた。


「みー、頭でわかってても苦しいんだよ。いつか、消えんの? この痛みも」


そのまま、テーブルに突っ伏して声を殺して泣いた。

湊は、いつもよりずっと遅い時間までいてくれた。

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