表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/74

P39

月曜日、学校に行くのは気が進まなかったけれど、休むわけにもいかない。

修はなんとなく体調が悪そうで、

ふらっとしながら、おはよう、と声を掛けてくれた。

あんな思いをしていたのに、たった一瞬姿を見ただけで、

声を聞いただけで、何もかもが帳消しになってしまう。

なんなんだよ、これ。

そんな僕の気持ちとは裏腹に、バカみたいな秋晴れのいい天気だった。

湿度の低い風がさらりと教室に入ってくる。

授業中、教師が僕と修の机の間の通路に立った。

とん、と木を指先で叩く音に振り返ると、いかにも寝起きです、といった目で、

驚いたように修が顔をあげた。


「居眠りとは余裕だな。

 文化祭はとっくに終わったんだし、ちゃんと切り替えろ」


教師の揶揄するような声に、すいません、と真っ赤になって俯く。

そんなに調子、悪いのか?


いつものメンバーで昼食をとる。

と、修がふわ、と両手で口元を隠してあくびをした。


「寝不足か? 修が授業中に居眠りなんてめずらしいな」


「うん、昨日ほとんど寝てなくて」


湊とのやりとりも、なんだかぼんやりしている。

修が眠れなかったなんて。心配して聞く。


「何かあった?」


「夕べ、ゆいが。いや、なんでもない」


また、ゆいか。


「えー、言いかけてやめるなよ」


むかむかが収まらなくて、つい責めるような口調になってしまう。


「ごめん、やっぱりちょっと寝ておく。これじゃ午後が辛いや」


そういいながら、湊と僕の机と寄せておいた自分の机をがたがたと戻し、

メガネを外して机に突っ伏した。

早瀬君も気になったようで、からかうように、


「寝かせてもらえなかった?」


と聞くと、


「うん、朝までなかれて。昼休み終わったら起こして」


といって、窓際の方へ顔を向けて、そのまま眠ってしまったようだ。

早瀬君がヒュー、と、やるね、というように短く口笛を吹いた。

一晩中、泣いているあの女を慰めて? どんな言葉で、どうやって?

精神状態はもう、限界に近かった。


HRも終わり、ほぼ無意識に帰りの支度をしていた。修がまた、


「もう打ち上げっていうのには時間が経っちゃったかな?

 でも、せっかくだから今週末に何かしない?」


といい始めた。ぴくり、と体が硬直する。

湊は予定があるからパス、という。

修は僕に向かって、じゃ、また今度にしようか、と声を掛けた。


「修だって忙しいでしょ」


「別に予定はないけど」


「彼女にまた、さみしいって泣かれるかも」


きょとんとする修に、ついトゲを含んだ言い方をしてしまう。自分が嫌だ。


「彼女って、唯の事? だったら大丈夫だよ。すごくいい子で」


あいつが? かっと感情が沸騰する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ