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P3

会場に入って、5秒で来た事を後悔した。

昼の立食スタイルのパーティだったんだけれど、

入り口すぐの場所にグラスタワーがそびえていた。

奥のテーブルにはチョコレートフォンデュが噴水のように流れていて、

なんだろう、どこがっていうわけじゃないけれど、下品でダサい。


まず、来賓客。

じいちゃん絡みの人たちは、さすがに隙がない。

着ている物、バッグ、アクセサリー、それに立ち居振る舞い。

いるだけで上品な雰囲気を放つ。

そこに混在する、ばばあの「ママ友」とかいう人種。

店のハンガーに掛かっていたものを買ってきてそのまま着ています的な、

ブランドのタスキをかけているようなスーツは、サイズが合っていなくて不恰好。

こういった服は、日頃の体系維持と姿勢や仕草が浮き彫りになる。

寝転がってセンベイかじりながらだらだらテレビ見ている女が着ていい服じゃない。

手入れが行き届いていないバッグと靴。ごてごてじゃらじゃらのアクセサリー。

変なテンションでばばあにお世辞のシャワーを浴びせるのに必死で、

きゃあきゃあうるさい。


遠くにバカみたいな派手なスーツのやつがいるなと思ったら、主役の陽一。

ラメの入った派手なショッキングピンクのストライプのスーツに、

でっかい赤の蝶ネクタイをしていた。

そんな格好、お笑い芸人かマジシャンか、

夢の国に住んでいるネズミ以外で見た事ない。

服は派手なのに、顔は地味。マジで血の気が引いた。

おばちゃん達から声をかけられて、できの悪いおもちゃみたいに、

「ありがとうございます」「15歳になりました」と繰り返している。


親父はというと、名刺を配るのと、ぺこぺこ頭を下げるので忙しそう。

一番気持ち悪いのは、ばばあ。

実質の主役で、周りからおだてられてハイテンションで、

「うちのようちゃんは」とキンキン声で繰り返している。

素敵なようちゃんを育てた私が一番素敵!ってわけだ。

15歳にもなる息子に、ようちゃんってなんだよ。

身内なのが恥ずかしすぎてみていられない。

こんな、バカみたいな場所で、バカみたいな格好をして晒し者になるなんて。

長男じゃなくて、本当によかった。


しばらく一人で会場をぶらついて、じいちゃんをみつけて近寄って行った。


「どうだ伊月、楽しんでいるか?」


「そんなわけないだろ」


「来年も来いよ」


「ふざけんな」


顔だけにこやかに、そんな会話をした。

細倉さんが僕達に気付いて声を掛けてくれたんだけれど。


「いっちゃん、久しぶり、大きくなったね」「いっちゃんも、もう中学生か、2年生? そりゃこっちも年を取るわけだ」「いっちゃん、今度おじさんのお店に遊びにおいでよ」


いっちゃん、いっちゃん、いっちゃん。

ばばあの「ようちゃん」にいらいらしていた僕は、

はあ、そうですか、と、不機嫌に返事をし続けて、終いにぶち切れて、


「子ども扱いするな、伊月さんと呼べ!」


といってその場を離れた。

そういえばそれ以降、細倉さんは律儀に僕を伊月さんと呼ぶようになった。

いらいらでぐったりしていると、じいちゃんが、

さっきのはちとよくないな、と言って来た。


「お前だったら、こういう場でも大人の対応ができるはずじゃないか。

 せっかく来てくれた人達に、少しくらいおもしろい余興をみて帰っていただこう。

 どうだ、主役を食ってやらんか」


と。

さすがに人を操縦するのがうまいな。

何するの、とじいちゃんのいたずらに乗る事にした。

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