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P19

「ごはん食べに来たんだけど」


「そうでしたか。では、こちらへ」


ほら、大丈夫じゃないか。

新人だか、バイトだか知らないけれど、文句言ったって無駄だ。

しかし、細倉さんの、しかもこんな雰囲気のよさそうな店の入り口に、

あんな店員おいておいたんじゃ台無しだ。


「そのギャルソン、なんなの。

 子供だと思ったら、見下していいって、そういうの、この店の方針なわけ?」


一言、いってやらないと治まらない。

席へ案内しようとしていた細倉さんが困ったように立ち止まって振り返る。


「メートル、です」


はあああ? 

そんな、客を睨むようなヤツが、よく自分をメートルだなんて名乗れたものだ。


「メートル?」


「当店の従業員が、大変失礼をいたしました」


あのさ、細倉さん、あんただってここのディレクトールになる前、

メートルやっていただろ。

給仕長の大事さはわかっているはずじゃないか。


「こんなのがメートルだなんて、この店、質、低いんじゃない? こんなんじゃ」


「パパに言いつける、ですか」


え、なんだよそれ、ちょっと待てよ。今、親父の名前なんて出したか?

つか、そうか、ここはもうじいちゃんの店じゃなくて、親父の管轄か。

予想外の返答にあんまりにも頭にきて無言になっていると、さらに言葉を続ける。


「いい加減になさい。他のお客様にご迷惑です」


ふざけんな、こっちだって客だろ。

怒鳴り返したかったけれど、ちらりと修の泣きそうな表情が見えた。

こいつら、だめだ。もう一瞬だって修をこんなところに置いておけない。

いこ、と、修の手を掴んで店から強引に連れ出した。


細倉め、やっぱりいつまでも僕を子供扱いか。

僕に手を引かれながら、待ってよ、という修を無視しながら歩く。

しばらく進むと、手を振りほどかれた。もう、こんな事は終わりにしたい。

修には笑って楽しい時間だけを過ごしてもらいたい。

必死で息を整えてから振り向く。


「ごめんね、変な店で。おなか空いたね、どこか別のお店いこ」


再び振り向いて歩きだしながら、

なるべく楽しそうな声のトーンになるように意識した。


「修、何が食べたい? この時間だと、ファミレスくらいしかやってないかなあ。

それか、ラーメンとか。……修?」


さっきの位置に立ったまま、僕の後について来ない修を見る。


「伊月、さっきの何?」


「何、って?」


あんな店に連れて行ったのは、確かに僕の失態だけど、

もういいだろ、そんなに責めないでよ。こっちだって。


「何があったのか知らないけれど、あんな態度、よくないんじゃない?」


はあ? さっき、そばで見ていただろ。何があったか知らないって、なんだよ。

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