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P16

修と湊を必死に誘ったけれど、湊は外食が嫌いだといってあっさり断ってきた。

修も突然の誘いに、持ち合わせがあんまりない、とか、

着替えを持って来ていないとか、いまいち乗り気じゃなさそうだった。

また次の機会にしようというのを、食事ならおごるし、着替えも貸すから、と、

半ば強引に食事につき合わせる事に成功した。

修を無理矢理誘っておいてこういうのは悪いけれど、

最初は、湊が帰っちゃって修と二人きり、なんて、なんとなく気が乗らなかった。

湊もいたら、もっと楽しいのに。

二人だけで話したりって、思えばほとんどなくて、会話が詰まりがちだったり、

気を使ったりする事になるかも、と思うと、ちょっと不安な部分もあった。


先にシャワーを使ってもらって、その間に修に貸す服を適当に出すつもりだったのに、

自分でも予想外にその行為に夢中になってしまった。

クラスマッチの時、初めてメガネをかけない修を見た。

はっきりいって、僕は自分の顔が好きだ。

陽一のキモイ顔と比べているからかもしれないけれど。

でも、修は別格。すごく僕好みの顔だった。

なのに、あの日以降、さりげなくメガネはない方がいい、髪もちゃんと切ったら、

と言っているのに、全く聞き入れようとしない。

顔がコンプレックスなんだか、何があったんだかは知らないけれど、

もったいない事この上ない。

でも今日だったら、服に合わせるから、とかうまく言えば、

ちゃんと髪を整える事を了承してくれるかもしれない。

こんなチャンス、そうないだろう。


「お先に……って、何してるの」


時間にして15分から20分程度だろうか、

修が髪をタオルドライしながら戻ってきた。

何って、服を選んで。ふと視線を向けて硬直してしまった。

何してるの、は、こっちのセリフ。

修に、シャワー後にとりあえず着ていて、と渡した服は、

僕の普段の部屋着で、裾が長めのTシャツに短めのハーフパンツ。

背が低い修が着ていると、だばっとした短いワンピースの裾から、

ちらっとパンツの裾がでているようになっている。

そこからみえる足は、高校生男子のものではない。

元々体毛が薄めなのは気付いていたけれど、すらりと細く、白く滑らかで、

筋肉とか骨が太くがっしりした「大人の男」といった雰囲気がまるでない。

肘も二の腕も、華奢で軟らかそう。お風呂上りの上気した肌と濡れた髪。

それが、パーツでみると男らしさがないのに、全体として組み合わさると、

決して女性っぽいというわけではない。

なよっているのとも違う。

むしろ、昔のお侍さんのような、凛とした姿勢のよさと、少年の体格。

アンバランスでありながら、不思議と調和の取れた四肢。

動揺を気取られまいと、我ながら妙なテンションで服を押し付けた。

Tシャツの上からあれこれ試着してもらう。

乾いてきた髪から、うなじから、普段使っているシャンプーやボディソープが香る。

その、倒錯。なんなんだよ、修は、男だからね。


「あーーーもーーーー、だめだ、先にシャワーしてくるから、修も選んでて!」


叫ぶようにそういって、シャワーに駆け込んだ。


最初に思っていたのより、ずい分と時間が掛かってしまった。

部屋に戻ると、服がある程度片付けられて、

待ちくたびれたような修の、遅いよ、という表情が迎えてくれた。

誰のせいだと思っているんだよ。

風呂場での自らの行為に、羞恥と罪の意識を感じて、心の中で八つ当たりをする。

そういえば、修もするのかな。そりゃ、そうか。

なんだかもう、色々どうでもよくなって、

修に貸す服は、はじめの頃に第一候補に挙げていた服に決めた。

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