4、心の色
雪がやんだ朝。
魔獣に襲われた村は、静かに再び日常を取り戻していた。
村人たちはカイルとエリシアに感謝を伝え、子どもたちは二人のあとを追いかけて笑った。
けれどーーエリシアはその笑顔を見つめながら、小さく首をかしげた。
「ねぇ、カイル。」
「ん?」
「人は、、、、、、、どうして誰かのために動けるの?」
カイルは少し考えてから、あっけらかんと答えた。
「難しいことじゃないよ。そうしたいから、だな。」
「、、、、理由になっていない。」
「だろ? でもそれでいいんだ。心って、理屈より先に動くものだから。」
エリシアはその言葉を胸の中で何度も繰り返した。
”心が先に動く”。
それは、彼女が生まれて初めて理解しようとした”人の感情”の形だった。
村を出る準備をしていると、一人の老人が二人に声をかけた。
「お嬢さん、その手の紋章、、、見覚えがある。」
「紋章を、、、?」
「古い記憶では、南の王国〈アーカディア〉の王家が持っていた印と同じだ。」
エリシアの胸がざわついた。
アーカディアーー伝説の王国。
数百年前、魔法の力を極めた末に滅びたとされる国。
「その国の名を聞くのは久しぶりだ、、、、」
老人の声が遠くなる。
エリシアの頭の中に、知らない風景がよぎった。
白い塔。金色の空。誰かの声ーー「帰りなさい、エリシア。」
彼女は息を呑んだ。
「、、、、、、、私、あの国を知っている。」
カイルは驚いた顔をして、それから笑った。
「だったら行こうよ。アーカディアに!」
「、、、、行く?」
「そう!行って確かめよう。君の”心”も、”本当の名前”もさ!」
その瞬間、エリシアの胸が少し熱くなった。
それが何の感情かはまだわからない。
でもーー不思議と”嬉しい”気がした。
雪の空に、陽が差し込む。
氷の令嬢と陽の剣士。
ふたりの旅は、伝説の王国を目指して始まった。
こんにちは、雛です。
これからの旅はとてつもなく長くなるでしょう。
長く愛読してもらえるように頑張ります。




