1、氷の令嬢
北方の大地に、永遠にい雪の降り続く領地があった。
そこに建つ白銀の屋敷ーーノースフェルド家。
その家に、一人の少女がいた。名をエリシアという。
彼女は生まれたときから、「笑う」ということを知らなかった。
痛みを感じても、涙の意味を知らなかった。
母は言った。
「心は弱さ。感情は貴族を汚す。」
父は言った。
「お前は家の名を守るための器だ。」
だから、エリシアは何も感じなかった。
喜びも、怒りも、悲しみも。
彼女の世界は、いつも無音の雪のように冷たく、白かった。
だけど、その均衡は一冊の古い魔導書によって壊される。
書庫の奥、誰も触れない棚の最上段。
埃をかぶった黒革の書が、ふと彼女の視界に入った。
なぜか、その本から目を離せなかった。
指先がページに触れた瞬間ーーー
光が弾け、空気が震えた。
屋敷中に風が走り、雪の窓が砕け散る。
そして、彼女の胸の奥に”何か”が生まれた。
それは、熱。
生まれて初めて感じる、心の鼓動。
「、、、、これは、、、、、、?」
胸に手を当てる。鼓動が早い。
わからない。
何が起きているのか。けれど、止められない。
その右手に刻まれた紋章が淡く光る。
それは、ノースフェルド家のものではなかった。
この国では存在しないはずのーーアーカディア王家の印。
雪の静寂が、崩れ落ちる。
そして、初めて”痛い”という感情を知る。
それが何なのか、まだ理解できないまま。
こうして、感情を知らなかった少女は旅立つ。
世界と、そして自分自身を知るための旅へーー。
こんにちは、雛です。
今回は始まりを書きました。
次は冒険のはじまりを書きます。
仲間がひとり増えるのでお楽しみに、、!




