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猫の特権

 どうやらこのマンションはスファンの家らしい。


 すっかり夜になり仕事が早いからとハンウが帰宅。残っていたジョンハが、

「ねえ、泊まってもいい?」

 と優花をなでながら言った。


「あ? 別にいいけど、俺も仕事早いから早く出るよ」

 風呂上がりのスファンが冷蔵庫からビールを出している。

 もちろんミキはボーっとその背中を眺めてるようだ。 こちらに背中を向けてるけど微動だにしないからそうに違いない。


「朝ご飯用意してくれてたらいいよ」

 ジョンハの返事にスファンは、

「何も買ってないから帰りなさい」

 とピシリと言った。

「えー」

「えー、じゃないの。実家に帰ってオンマに朝飯つくってもらえよ。今は彼女もいないんだからさ」

「大きなお世話だよ」

 とむくれたジョンハはすっくと立ち上がった。

「それはヒョンも一緒でしょ」

「俺は今は仕事が恋人だから」


 2人の会話を聞きつつ、2匹を見たら妙に顔が輝いているような。猫って立場忘れてない?

 こんなプライベートな話聞けるなんて猫でも悪くはないけど。

 ……って、2人がフリーってことはもう1人は彼女がいるのかも 、そう思っているとジョンハが声をひそめた。


「ねぇ、ハンウさあ、今日休みが合ったからって言ってたけど いつもはあっちを優先してなかった?」

「ああ、それな」

 顔をしかめたスファンはジョンハの肩をつかむようにして居間のソファへと進む。


「どうも、危ないみたい」

「へっ? 危ないって、ダメになっちゃったの?」

 でかい声を上げるジョンハにスファンはますます顔をしかめる。

「だから、まだそうじゃないけどさあ」

 どかりとソファに座ったスファンは缶ビールをテーブルに置いた。


「ちょっとやばいかもって感じみたいでさ」

「そうなんだ」

「あいつには何も言うなよ」

 わかってるよ、とジョンハは口を尖らせたが、スファンの向かい側に座ると小さくため息をついた。

「仕事が忙しいとこういうこともなかなか難しいよね」

「まあなあ」

 スファンも「バランスよくするってのがなあ」とソファにもたれかかった。


 結局、スファンは朝早くから2人と3匹分のご飯を用意して仕事に行った。


 朝ごはんをかっ込みつつ、ミキが「さすがよねえ~」とうっとりしている。

「何が?」

「だって何やかや言ってもジョンハのご飯もちゃんと支度して、もちろん私たちのご飯も用意していってくれたじゃない」

 秋奈がご飯がのったお皿から顔をあげると、ミキは自慢げに顔を上げる。


「そりゃあ、5人の中ではお母さんだから、ねえ」

 優花に同意を求めたが、ご飯を前にした優花はボーっとしている。

「どうかした?」

「え?」

 今、目が覚めたような顔の優花が目をぱちくりとさせた。


 バタンっ

 ガタガタ


 今起きたらしいジョンハが客間らしい部屋から出てくると、あくびをしながら椅子に座った。

「おはよう」

 テーブルの側でご飯中の私たちに声をかけると、優花に「いつのまに起きたの?」と言った。


 瞬間、秋奈は目を丸くして優花を凝視した。

 真っ赤になったのか毛並みでよくわからないが、人間ならたぶん全身真っ赤になってたんじゃないかしら。優花は猫背を益々丸めてうつむいた。

 見ると、ミキが「一緒に寝たんだ~」とにやにやしている。


「ちょ、ちょっと待って、一緒にって言っても横で添い寝で、しかも猫だし」

「寝てんじゃん」

 慌てる優花にミキは鼻を鳴らしたが、何だか妙に余裕を感じるというか。

「ミキ、あんたも昨日の夜、姿が消えてたよね」

 秋奈は目をきゅっと細めた。


 昨晩、居間のソファで寝ていた3匹。夜中にふと目が覚めた秋奈はミキも優花も側にいないことに気が付いた。

 だけど、部屋は広いし、どこか移動して寝てるんだろうと思ってたのだけど。


 ぺろっと舌を出したミキは、

「夜中にこっそり部屋に行ってみただけよ」

「って、一緒に寝たんでしょ」

「もうっ、一緒っていっても背中を向けてたから、その側で眠っただけだもん。怪しいのは優花でしょ」


 振られた優花は口をぱくつかせる。2匹して「ほら、吐け!」と詰め寄った。


「だ、だから、私はそんなつもりはなかったのよ。だけど、目が覚めて、ジョンハの寝顔が見てみたくて。見たらすぐ戻ろうって思ってたのよ! ほんとよ!!!!」

 つまりは、側に来た優花に気づいたジョンハが「ほら」と横に寝かせてくれたらしい。


「えー、いいなあ、そういうの」

 自分もスファンの横に忍び込んだくせに、ミキは「次はその手で」とぶつぶつ言っている。


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