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元に戻る

 3匹じゃなくて、1人と2匹でソファに座ると息をついた。


「ねえ、ジョンハってば、仕事行きたくなさそうじゃなかった?」

 ミキがにやにやした顔を秋奈に向ける。

「うんうん。それに2人して赤くなっちゃって、ねえ」

 2匹でにやにや顔を見合わせた途端、真ん中に座っていた優花にむんずと抱え上げられた。


「あんたたち! 何かにゃーにゃー言ってるけど、だいたい何言ってるかなんてお見通しなんですからね」

 両手で抱えあげた私たちは交互ににらまれた。

「まったく、どれだけ付き合ってると思ってんのよ。2人してにやにやしちゃって」


「ちょっ、ちょっと優花、ちゃーん。そんな怒んないで」

「そーよー、だいたい本当のことなんだから」

 言いかけた2匹そろって、むぎゅーっと抱きしめられる。

「元に戻るまで私がかわいがってあげるから覚悟しなさい。あー、ホント、猫だとかわいいわ」

「何それ! どういう意味よー」

「や、やめてー、くすぐったい!」

 にゃごにゃご言う私たちをむぎゅっとしたまま優花が、

「早く戻ってよ」

 と小さく言った。


「優花」

 ちらりとこちらを見たミキが優花の手からのがれるとソファに滑り降りる。

「もうすぐ戻るわよ」

 ふんぞり返ったミキは、

「それに、優花だけで3人の相手なんてさせられないもんね」

 と鼻の穴を膨らませた。

「そうかあ、そーよね」

 秋奈もうんうんとうなづいてると、優花が「また変なこと言ってるんでしょ」と眉根を寄せる。


 2匹して吹き出したが、「戻って、お礼ぐらい言いたいもんね」とにこりとしたミキは自分の足元に視線を落とした。

「早く戻りたい」

 そう言った瞬間だった。


 ミキがいきなり身体をぐっと曲げる。

「ミキ!?」

 優花が驚いて、出そうとした手を引っ込めた。

「まさか、ミキ?」

 秋奈もミキの身体をまとうように白くなっていく空気にどうすることもできず、そう声を出すのがやっと。


 苦しそうに身体を九の字に曲げたミキはこちらを見ると、

「そうみたい」

 とだけ答えた。


 窓から差し込む夕日は夜のものに変わりつつあった。

 もうそろそろ帰ってくるかも、と思っていると、玄関ドアからがちゃがちゃと音がした。スファンが奥さんのように食料の入ったらしいエコバッグを抱えて居間に入ってきた。


「白猫さんが戻ったって? ジョンハから連絡が」

 言った手からエコバッグが床に落ちる。

「もしかして、靴下?」

 ソファの側に立つ女性、靴下を履いたような黒と白の猫だったミキは小さくうなづいた。



「あとは三毛さんだけだね」

「もうすぐだよ、きっと」

 スファンもジョンハも気にして言ってくれるし、ミキや優花にいたっては秋奈の側から離れようとしない。


 私に遠慮と言うよりは今更恥ずかしくなったらしい。あれだけ大胆に行動できていいとか言ってたのに。ホント、今更なんですけど。


 優花とミキに挟まれていた秋奈はひょいっとソファから降りると、パソコンが置いてあるテーブルに飛び乗った。

 丸い手先でパソコンを起動する。

 何とかワード画面を開くと、ミキや優花がそばにやってくる。

 秋奈はパソコンのキーをがちゃがちゃとさせると、2人に顔を向けた。


「ん? 何?」

「アルファベット? ああ、もしかしてローマ字?」

 首をかしげるミキに優花が読みにくそうに画面を追った。

「えーっと、watasinokotoha kinisinaide、わたしのことはきにしないで」

「気にしないでって。え、えーっ! デートしてきてって」

 続けたミキが目を白黒させている。

 スファンとジョンハが何事かと後ろに寄ってきているのに気付いた優花が焦って見せないように手をばたつかせている。


 焦っている2人を無視して、スファンとジョンハに向かってニャーと鳴いた。

「明日には帰っちゃうんでしょ? 三毛さんも行って来いって言ってくれてるし、ねえ」

 ジョンハにスファンも秋奈に顔を向けると「いいの?」と確認を取ってくる。

 ニャーと答えるが、ミキも優花も口をぱくつかせてるだけでおかしくなってくる。

「でも、1人で残していくのは」

 優花とミキが言うと、スファンが「じゃあ」と答えた。

「ハンウにこのことを説明して来てもらおうか」

「そうだね、いいんじゃない」

 ジョンハが答えると、スファンがテーブルに置いてあったスマホに手を伸ばした。それを秋奈は両手で手をつかんだ。


「ダメ、呼んだらダメだよ」

 にゃあにゃあ言っているしかわからないだろうけど、必死さは伝わったのか、スファンが「ダメなの?」と聞いてきた。

「ハンウ、忙しくてここのとこきてないから、このことは知らないけど、言えばわかってくれるよ」

 首を傾げたジョンハが同意を求めるように優花やミキに言う。


 優花とミキがこちらを見ている。

 私は通じないだろう猫語で一生懸命訴えた。

「ダメだって、このことも言わないほうがいいから。このまま黙っててほしい」

 ミキと視線を交わした優花が「言わないほうがいいのね」と言った。

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