誰がどの子の飼い主に
いつもの朝。
スファンは私たちのご飯を3つのお皿にわけて、床に置いてくれる。
ジョンハは朝ごはんをものすごいスピードでかっ込んでるし、スファンは料理で使ったフライパンや菜ばしをちゃちゃちゃと洗っている。
ミキも優花も満足げにシラスの乗ったご飯を食べていて。
ミキが無事に戻ってきてくれて、いつもと同じような朝ごはんの風景。
秋奈は自分の三毛猫模様の手を眺め、小さなお皿に乗ったシラスご飯を見、目の前で美味しそうにご飯を食べてる2匹の仲間を見つめた。
いつもと一緒。
そう思いつつ、ご飯に口をつけていると。
ガチャリ
ドアの開く音がした。
瞬間、秋奈はびくりとしてしまった。
「おはよー、ハンウ」
ジョンハが口をもごもごさせつつ挨拶。
「ハンウ、朝飯できてるぞ。早く食えよ」
スファンがさっそく、茶碗にご飯をよそっている。
「ああ、うん、おはよう」
半分寝てるような顔で椅子に座ったハンウはぼんやりとご飯中の秋奈たちに視線を向けた。
「ねえ、スファンもジョンハも猫と一緒だったよね」
「は?」
「一緒って、まあ、そうだけど」
スファンもジョンハもどういう意味だという顔だ。
「あの子とあの子、だよね」
秋奈を避けて、ミキと優花を指差すハンウ。
「お前、三毛さんの場所取ったから気にしてんの? 三毛さんはお前のとこに来なかったのか。俺らのとこには来てないよ、なあ」
首をかしげているジョンハにスファンが同意を求めている。
「うん、来てないよ。じゃあ、ソファで寝てたんじゃない? かわいそうにねえ」
と、秋奈に目をやった。思わず振り返った秋奈にハンウが顔を向けた。
「いや、だから、悪いかなって思って、こっちに移動を」
言いかけたハンウの目とばっちりと合ってしまった。
うわっ!
頬がかーっと熱くなる。
猫なんだから、この毛並みなんだからわかるはずないのに。
全身、真っ赤になってるのが気づかれるような気がして、ご飯もそこそこにすたたたたっとその場から逃げてしまった。
「あーあ、嫌われた」
「ほらな、場所とっちゃうからだぞ」
「いや、だから」
ジョンハとスファンが面白そうにからかう声が遠くに聞こえる。
ハンウは何を言うつもりだったんだろう。
あれは夢だと、思うんだけど。
2人して同じ夢を見たのかな。それはそれで恥ずかしすぎるけど。
ふと気がついたら、やっぱり猫で、そっと天窓のある部屋から脱出した。
だから、夢を、妙にリアルな夢を見たのに違いない、って自分に言い聞かせてたんだけど。
「秋奈?」
「何かあった?」
秋奈が逃げ込んだクローゼットにミキと優花が身体を滑り込ませてきた。
どう言ったらわからず黙っていると、優花が「ねえ」とミキに顔を向けた。
「何?」
「ミキ、スファンにずっと飼ってもらうのでもいいって言ってたけど。今もそうなの?」
ミキの目が少しだけ丸くなる。
「あの話?」
優花はかすかにうなずいた。
あの話。秋奈は今朝、スファンがジョンハと話していたことを思い出していた。
朝、早くから起きて牛乳を飲んでいたジョンハ。スファンは朝ごはんを作りつつ、そばにやってきたミキに視線を向けた。
「なあ、ジョンハ」
「ん? 何?」
「俺さあ、この子達を飼おうと思うんだ」
「え? 飼うって、飼い主は?」
スファンは少しだけ顔をしかめると、
「もう探さないでもいいかなって」
ミキに手を伸ばすと頭をそっとなでた。
「またあんなことになっても嫌だしさあ」
偽飼い主の登場と、ミキが捨てられそうになっていたことが堪えているみたい。
ジョンハは「そうだね」と眉を下げたが、パッと顔を輝かせると、
「3匹は大変でしょ? 1匹ぐらいは面倒みるよ」
と言い出した。
どう考えても、優花のことだよねえ、とミキと2人でにやにや顔を優花に向けた。気付いた優花はたぶん赤面してるであろう顔をうつむかせている。
うーん、てことは私だけのけもの感強いよなあ、と秋奈が思っていると、ジョンハが「1人1匹のほうがよくない?」と言い出した。
「え? お前はあの子を連れて行く気だろ。じゃあ、三毛さんはハンウにまかすのか?」
スファンがふとこちらを見たが「それもいいかあ」とにこりとした。
「あいつと気が合うみたいだもんな」
なっ、そんなこと、ともちろん猫語で言いかけて、ミキや優花が目じりを下げているのにのに気がついた。
「それもいいんじゃない?」
「ねえ~」
「なっ、何言ってんの!」
2人にぎゃんぎゃん言っていると、スファンがご飯がのったお皿を目の前に置いてくれて、朝ごはんになったのだが。




