第98話 会食
今日のお食事は2組に分かれて行う事になった。1組目はユーリ、アリシアさん、私。2組目はその他の団員。メラニンさんがアリシアさんを心配していたが大丈夫だよ!エルマ精霊国の皆さんは優しいのだ。それよりメラニンさん達もゆっくり楽しんで!
「はあ。わかりました。ユーリさん、ナルミさん。アリシアさんをよろしくお願いします。」
メラニンさんは律儀に頭を下げていた。でも知ってる。その顔に笑みが浮かんでいた事を。今日は騎士達や野郎共Aチームの面々と飲み明かすのだろう。
「うんうん。楽しんでくださいね。」
私達3人はハンナさんが迎えに来るのを待つ。
「ナルミ…さ。温泉で私の事をやらしい目で見てただろ。」
ゲフンゲフン。む、むせてしまった。
「いや、あの、その…」
「いやいや、良いんだよ。確認しただけだから。」
「あの、あの。あまりにきれいだったから…」
「いやいや、良いんだって。私も堪能させてもらったし…。いやー、眼福だった。」
ゆ、ユーリも何言ってんのー。動揺した私があたふたしているとハンナさんが迎えに来た。
「??どうしました?」
「いえ、何でもありません…」
真っ赤な顔で答える私をユーリはニヤニヤしながら見ていた。もう!性格悪いんだから!
私達はハンナさんに広間へと案内された。畳が敷いてあり、とっても良い香り。ララーシャ様とラーシャは先に来て座っていた。
「ねえ、ユーリ…。これに座れば良いの?」
「うん、そうだよ。座布団って言うんだ。」
私はおずおずと座布団へと座る。アリシアさんも初めての座布団だったようできれいに座るのに四苦八苦していた。わかるよ、アリシアさん。胡座で座ると浴衣がはだけちゃうんだよね。でも慣れるとこの浴衣という着物は楽だ。リラックスできるね。
「さあ、皆さん。今日は気楽にしてお食事を楽しんでね。ハンナとメルも一緒にどお?」
ララーシャ様はお酒の瓶を2人に見せながら尋ねていた。
「そうですね。私達もご一緒させてもらおうかしら。」
ハンナさんとメルさんも座布団を持って来るといそいそと座った。
「それじゃあ、ご飯の用意をお願いね。」
襖を開けて食事を持ってきたのは。
「あ!皆んな!!」
給仕をしに現れたのはラーシャを護衛した時に知り合ったエルフの皆んな!
「ユーリさん!ナルミさん!会いたかった!」
「皆んな、元気そうで良かった!」
本当に良かった。皆んな、辛い目にあったのに生き生きしてある。
そしてどんどんと料理が運ばれてくる。エルマ精霊国は山の幸、川の幸に恵まれている。総じてシンプルなお料理が多い。調味には大豆という豆を発酵させて作った物をよく使う。その調味料はバリエーションが豊かであり、液体(醤油)からペースト(味噌)と種類が豊富だ。醤油も原料の配合や熟成期間によって味が違うらしく、用途によって使い分けている。(味噌もそうらしい。)
今日の献立は…
山で採れた山菜に衣を付けて油でサクッと揚げたもの。(天ぷらというらしい)山菜を胡麻で和えたもの。チーズを味噌に漬け込んだもの。たくさんのお野菜が入った玉子焼き。色々なお野菜を味噌に漬けた漬物などの前菜。
猪肉を味噌で煮込んだもの。紙で包んだ川魚を香草と一緒に焼いたもの(何で紙が燃えないんだろ?)
それにご飯とスープ。スープには猪肉のお団子と山菜がたっぷり入っている。
「かーー、ララーシャ!どうしよう。お酒が無限に飲めちゃうよ…」
お米のお酒を飲みながらユーリはご機嫌だ。
「う、う。私もお酒を飲んでみたい…」
アリシアさん、もうちょっと大きくなったら一緒に飲もうね。
「このお料理、本当に美味しいですね。私、味噌で煮込んだ猪肉が好きです!ナルミさん!ご飯と食べてみてください!」
どれどれ?
「う、美味い!!」
でも私はとりあえずはお酒かな…
「ユーリ。二日酔い防止の魔法をかけてもらったら。メルが得意よ。」
「え?お願いお願い!」
「私もかけてください、メルさん!」
私は山菜の天ぷらが気に入った。噛むとサクサクの衣の中の食感が歯に心地よい。衣の中の山菜は程よく蒸されており、熱によって活性化された山の香りが口腔内に充満する。そこへお酒を流し込むと、
「ぷはーー、何じゃこりゃーー!」
こうなる。
「ナルミさん。お久しぶりです。また、お二人に会えて嬉しいです。」
「ミーヤ!」
私はミーヤと抱擁した。お、後ろに抱擁待ちの列ができている。皆んな!元気そうで何より!私は皆と順番に抱擁した。
「せっかく内輪の宴会にしたんだからさ。皆んなも一緒に飲もうよ。いいよね、ララーシャ。」
ユーリの言葉にララーシャ様はニコリと微笑んだ。
「もちろんよ!」
うわーと皆から歓声が上がった。この夜は楽しい時間を過ごさせてもらった。本当に楽しい夜だった。この時の私は数日後に深く胸を抉られるような喪失の時間が訪れるとは夢にも思っていなかった。
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