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第92話 アルファジオの意義

 私達は国境を超えてエルマ精霊国の王都を目指している。エルマ精霊国に入ってから本当に木々が麗しく、神聖な魔力に満ちていた。ピー子が先ほどからやたらと元気だ。


「ラーシャ様と私は同じ歳なんですね!お会いするのが楽しみだな。」


 アリシアさんとハンナさんの会話を聞いて思い当たったのだ。そう言えば…


「ユーリ、アイシャも同じくらいの歳ですね。」

「ナルミさん。アイシャさんという方はどなたですか?」


 アリシアさんが目を輝かせて聞いて来た。


「えーと、王立軍の看護隊の隊員だよ。前に士官学校の学生だったアイシャに講習をした事があったんです。」


 アリシアさんはうれしそうにしていた。


「私、あまり同世代の友達がいなくて。ラーシャ様もアイシャさんにも会ってみたいです。それにしてもユーリさんとナルミさんの講習って楽しそうですよね!」


 アリシアさんの無邪気な問いかけにユーリと私は苦笑した。


「えーと、死にかけたけどね…」


 ユーリの返答にアリシアさんは絶句していた。


「えっ!」

「ま、まあ、それはそうとハンナ。王都までは森を通るの?」

「ええ、そのつもりです。道中にあるエルフの集落に通達してますので、歓迎されると思いますよ。」


 ユーリの浮かない顔を見て、ハンナさんは訝しんだ。


「何かあったのですか?」

「はい、実は王国側でエルフの一団に襲撃されまして…」

「え?」

「特に怪我をしたりとかは無いのですが、気をつけた方が良いかと思いまして。」


 ムライさんが考え込んでしまった。


「王都まではララーシャ女王の直轄地です。集落もララーシャ女王と懇意の部族なので問題無いと思いますが…。お言葉、留意いたします。」


 ムライさんは生真面目だ。真剣な顔で答えていた。


「あと…」

「他にも何かあったのですか?」

「ああ、ラーシャを狙っていた死の商人。どうも背後にバルムンドラ帝国がいるようなんだ。でね、私は今、元バルムンドラ帝国の兵士に付け狙われていて…」

「ユーリ様がそんな表情をするとは!そんなに強いのですか?」


 ハンナさんの問いかけに答えたのは野郎共Aチームのモンシアだった。


「あいつは変態なんです!マゾヒストなんです!ユーリさんにぶちのめされる事に喜びを感じて、ユーリさんを付け狙っているんです!」


 うう、モンシア…圧がすごい。


「うん、あいつが変態なのは否定しない。でも強い。熊みたいな変態には手を出さないでね。」


 ハンナさんとムライさんが頷く。


「もうそろそろエルフの集落に着くと思います。」


 ハンナさんの言葉に皆、気を引き締め直した。何が起きているのだろう…



 

 

 身体中を鋭い氷片で切り刻まれていた。鋭い痛みが全身を駆け巡る。


「バン!お前は裏切り者なのだ!」


 長の言葉が聞こえた。


「違う!」


 大きな声で否定したバンに禍々しい短剣を手にしたラムダが迫って来た。


「苦しみながら死ぬがいい…」


 バンはあまりの恐怖に声にならない悲鳴をあげた。


 

「ゆ、夢か…」


 バンは全身にじっとりとした汗をかいていた。全身が痛い。


「お、俺は助かったのか…。」


 バンはゆっくりと辺りを見渡した。隣には赤々と焚き火が燃え、大きな男が魚を焼いていた。


「気がついたようだな。」

「貴方が助けてくれたのか…?」


 男は答えずに焚き火へ薪をくべた。バンは起きあがろうとしたが身体の痛みで思うようにならなかった。


「まだ動かない方が良い。」


 バンはこのぶっきらぼうな男に好意を感じていた。


「す、すまない。俺はバン。エルマ精霊国の戦士だ。」

「そうか。俺はアルファジオだ。バン、お前はユーリの名を呼んでいたな。」


 バンは自分の軽率さを恥じた。不用意にユーリの名を呼んだ事にである。


「特にユーリ様と面識がある訳ではない。エルマ精霊国の英雄だからな。死の間際に名を呼んでしまったのだろう。」


 バンは自分でも苦しい言い訳だと感じていたがアルファジオはそれ以上何も言わなかった。


「アルファジオ殿は…」

「アルファジオで良い。」

「アルファジオはユーリ様のお知り合いなのか?」


 バンの問いに対するアルファジオの回答はバンを大いに驚かせた。


「ユーリは俺の将来の伴侶だ。」


 あまりに自然なアルファジオの答えにバンは一片の疑いも持たなかった。


「な!本当か!それは渡りに船だ!アルファジオ、ユーリ様に会わせてくれ!」

「何ゆえにだ?」


 バンはラムダとの経緯を包み隠さずにアルファジオへ話した。アルファジオもバンの話を黙って聞いていた。


「どうだろう?アルファジオ。ユーリ様に会わせてもらえないだろうか…」

「わかった。バン、それでは一緒にユーリの後を追おう。」


 バンはアルファジオの言い回しに違和感を感じたがユーリに話ができる事への安堵感が上回ってしまった。


「バン。お前は先ず、身体を休めろ。明日から忙しいぞ。」

「ああ、恩に着る。」


 バンは煎じた薬草をアルファジオに無理矢理飲まされて、そのまま深い眠りへと誘われた。

 


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